
富士通、2030年までに1万量子ビット超の超伝導量子コンピュータ開発へ
— 実用的な量子計算の実現に向けた大規模プロジェクト始動 —
概要
富士通は、物理量子ビット1万超・論理量子ビット250規模の超伝導量子コンピュータを2030年度までに完成させる計画を発表。独自のSTARアーキテクチャを採用し、初期段階の耐障害型量子計算(early-FTQC)を実現、特に材料科学分野での活用を目指す。
開発ロードマップ

- 2030年度:物理1万+ビット、論理250ビットの超伝導量子コンピュータ完成
- 2035年度:超伝導+ダイヤモンドスピン量子ビットの統合により論理1,000ビットシステム実現を目指す
- 将来的には複数チップの相互接続による拡張も視野に
技術開発の重点分野

- 高精度量子ビット製造
- ジョセフソン接合の製造精度向上で周波数ばらつきを低減
- チップ間接続技術
- 複数量子ビットチップを接続する配線・パッケージ技術
- 高密度実装&低コスト制御
- 極低温環境での配線・部品削減、発熱抑制技術
- 量子誤り訂正の復号技術
- 測定データの高速復号アルゴリズム開発
背景と実績
- 従来コンピュータを超える計算能力が求められる社会課題に対応
- 2024年:大阪大学とSTARアーキテクチャを発表(6万ビットで従来超え可能と試算)
- 2023年:64量子ビット機を開発
- 2025年4月:世界最大級256量子ビット超伝導量子コンピュータ完成
- ダイヤモンドスピン量子ビットの研究も推進(オランダ・デルフト工科大学/QuTechと共同)
総評
富士通は「メイド・イン・ジャパン」の耐障害型量子コンピュータで世界をリードする姿勢を明確化。2030年の1万+ビット達成は、材料科学や新素材開発など高度シミュレーション分野でのブレークスルーをもたらす可能性が高い。一方で、最終目標である100万量子ビットの完全耐障害型マシンには依然として大きな技術的ハードルが残る。