
ミトコンドリアと記憶回復研究の最新動向
近年、ミトコンドリアの機能が記憶力やその回復に関与していることを示唆する研究が国内外で進んでいます。特に認知症、加齢性記憶障害、脳神経疾患の分野での進展が目立ちます。
1. ミトコンドリア機能低下と記憶障害・回復
- ミトコンドリアの機能低下は加齢や神経疾患(認知症、アルツハイマー病等)の記憶障害の原因の一つと考えられています。特定の代謝経路(たとえばピルビン酸代謝)の低下が加齢性記憶障害を招きますが、関連因子(PDHのリン酸化など)を調節すると記憶回復の効果が確認されています。jstage.jst
2. アルツハイマー病モデルにおけるミトコンドリア機能
- アルツハイマー病モデルマウスの研究では、ミトコンドリア機能の低下が毒性の高いAβオリゴマーの蓄積と認知機能の悪化につながることが明らかになっています。特にミトコンドリア外膜の酵素「MITOL」の減少がミトコンドリア機能低下と記憶障害・病態悪化を引き起こすことが発見され、MITOLの維持や促進が新たな治療ターゲットとして期待されています。amed
3. 海馬領域とミトコンドリア―学習・記憶・社会性
- バージニア工科大学による研究では、海馬CA2領域ニューロンのミトコンドリア部品「MCU」の欠損でシナプスの可塑性や記憶形成が障害されることが示されました。逆に、MCUの機能を保つことで神経細胞に十分なエネルギーが供給され、記憶や社会的認知の回復につながる可能性があると注目されています。nazology.kusuguru
4. ミトコンドリア・ダイナミクスによる細胞治療
- 十愛大学の研究では、正常なミトコンドリアが異常な細胞に「移動」することで機能回復をもたらす現象(ミトコンドリア・ダイナミクス)が明らかとなっており、脳梗塞・神経難病・認知症の超早期治療に応用できる可能性が期待されています。特に認知症の前段階(MCI)では、改善効果も示唆されています。juntendo
5. カンナビノイド系とミトコンドリア、加齢性記憶障害
- 内在性カンナビノイド受容体(CB1受容体)とミトコンドリア機能の関係を明らかにする研究も進んでおり、ミトコンドリアの膜電位、ATP産生、細胞死との関連から創薬研究へとつながっています。特に加齢性記憶障害の治療標的にもなり得ます。kaken.nii
注目ポイント
- シナプス強化・記憶固定・エネルギー産生のカギはミトコンドリアの健康維持。
- MITOL、MCU、CB1受容体など、ミトコンドリアの機能調節因子が新規治療ターゲットに。
- **ミトコンドリアの移動現象(ダイナミクス)**は、超早期予防・治療の可能性として注目。
まとめ
ミトコンドリアの機能回復や維持は、加齢や病気で低下する記憶や認知機能を回復・改善できる可能性があることが最新の研究で示されています。治療標的として、ミトコンドリア関連因子の調節や移動現象へのアプローチは、認知症や神経疾患だけでなく健康な老化にも重要な役割を果たす可能性が注目されています。jstage.jst+4
- https://www.jstage.jst.go.jp/article/nl2008jsce/42/158/42_58/_pdf/-char/en
- https://www.amed.go.jp/news/release_20210212-03.html
- https://www.tmu.ac.jp/news/topics/36657.html
- https://www.tmghig.jp/research/topics/202210-14601/
- https://nazology.kusuguru.co.jp/archives/170650/2
- https://www.juntendo.ac.jp/branding/report/149/
- https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22K17815/
- https://www.ushio.co.jp/jp/technology/lightedge/200905/100390.html
- https://www.uec.ac.jp/research/members/opal-ring/5000066449.html