
まとめ記事:なぜメタ社はまだメタバースに投資するのか?
VRブームの失速とMetaの現状
かつて「次の大波」とされたVR(仮想現実)は、3DテレビやNFTのように一時のブームで終わったかのように見える。Metaが2022年にローンチしたHorizon Worldsは、当初30万人の月間利用者を集めたが、翌年には1日900人程度しか残らなかったとされる。一方、AIブームが急拡大する中、MetaもAIデータセンターや「パーソナル・スーパーインテリジェンス」構想に数百億ドル規模の投資を進めている。
それでもMetaは、VR/AR事業部門であるReality Labsへの投資を続けており、2020年以降の累積損失は6,858億ドル(約68.58B)に達する。売上はわずか3.7億ドルで、赤字が目立つ状況だ。
「短期的失敗」か「長期的戦略」か
- 失敗を指摘する声
VR普及率は依然として低く、2023年の米国成人の利用は17%にとどまる。批評家は「開発者の関心を需要と勘違いしている」と指摘。 - 長期戦略を評価する声
- 競合の参入:Apple、Google、Samsungなどが次世代XRに参入していることは「市場が無視できない」証拠。
- 学んだ教訓:モバイル時代に主導権を逃した反省から、次のコンピューティング基盤を逃さない姿勢。
- 市場支配力:2024年Q4におけるVR市場シェアは77〜84%。赤字を続けても競合参入を阻む「戦略的防御」になる。
兆しと成長の芽
- スマートグラス:Ray-Banと共同開発した製品は100万台以上売れ、2024年には売上が3倍、アクティブユーザーも4倍に成長。
- 軍事契約:米軍向けARデバイス開発も進行中。
- AIとの融合:AI翻訳・AIアバター・リアルタイム支援が加われば「VR/ARは必須になる」と専門家は予測。
メタバース投資の本質
- プラットフォームの未来像
Metaは「スクリーンに縛られない世界」を狙っており、将来的にVR/ARが検索・SNS・Eコマースの新しいチャネルになると見込む。
Googleが早期にAndroidへ投資したように、Metaも短期的なROIではなく次世代インターフェースの主導権を狙っている。 - データ主権の確保
「インターフェースを制する者がデータを制する」――Metaは将来のユーザー接点(VR/AR/AIグラス)を自社のものにすることで、データ支配権を維持しようとしている。
結論
Metaのメタバース投資は、現状では「赤字を垂れ流す無謀な賭け」にも見える。しかし、長期視点では次世代のプラットフォーム覇権争いに向けた布石であり、AIとの統合が鍵を握る。
今は目立たないが、スマートグラスやAI連携が普及すれば、VR/ARは「第二のスマホ」になり得る。Metaの戦略は、10年先を見据えた「長期的なプラットフォーム投資」だと捉えるべきだろう。