
まとめ記事:「宇宙保険 2025年序盤は堅調もMethaneSAT請求で揺らぐ」(2025年8月17日)
1. 2025年の序盤状況
- 2025年は保険市場にとって順調なスタート。これまでの請求はわずか2件:
- Odin(Brokkr)小惑星ミッション喪失:約300万ドル
- MethaneSAT制御喪失(6月20日):約4,000万ドル
- MethaneSATは運用2年目に入り、更新直後の保険が適用される形に。
- 2024年の好調な業績(利益を確保)を引き継いでいたが、やや不安を残す展開。
2. 2024年の保険実績
- 大規模な保険請求
- EROS C3-1推進系故障:1.14億ドル(63%部分損失)
- EDRS C(HYLAS 3)通信不具合:6,000万ドル
- Utilitysat推進系不具合:3,000万ドル
- Lijian-1打上げ失敗:680万ドル
- その他
- Gaofen Duomoの2,700万ドル請求は取り下げ。
- 年間の請求合計は2億1,080万ドルにとどまり、推定保険料収入(5.8億ドル)に対して十分な利益を確保。
- 対照的に2023年は10億ドル超の赤字。2024年は市場信頼回復の年となった。
3. 市場動向と課題
- 一部大手保険会社は2024年に人員削減したが、元社員が独立して新規参入する動きも。
- 市場全体の引受余力(キャパシティ)は約6億ドルと限定的で、大型案件への対応は難しい状況。
- 収入保険料総額は例年通り 5.5~6億ドル規模を維持。
4. 保険料率の傾向
- 2024年の好業績を受け、2025年前半は保険料率がやや低下傾向。
- 打上げ+1年(L+1)保険料率:やや下落。
- 打上げ保険(LVF):信頼性の高いFalcon 9などは低下、一方で失敗が出たPSLVは上昇。
- 軌道上保険(1年目以降):微減傾向。ただし高額衛星(2.5億ドル超)は0.2%程度上乗せ。
- 多くの引受人は「最初の1年間が衛星信頼性の弱点」と主張し、L+1料率の維持・上昇を望む声も。
5. 今後の見通し
- 2024年の黒字と2025年序盤の堅調さが市場に再び自信をもたらした。
- ただし、2023年の巨額損失を完全に取り戻すには、あと3年間は安定的な黒字が必要とされる。
- 発射回数や新型ロケットの遅延(New GlennやVulcanなど)が保険収入を左右する可能性も依然残る。
✅ 結論
宇宙保険市場は2024年の利益回復に続き、2025年も良好な滑り出しを見せた。ただしMethaneSATの大口請求が警鐘となっており、依然としてリスクは高い。市場全体のキャパシティ不足や料率調整の課題を抱えつつも、数年間の安定した黒字が確保できれば、宇宙保険は再び成長軌道に乗る可能性が高い。