
NASAとNOAA、太陽の影響を調べる3機の衛星を打ち上げ
打ち上げの概要
2025年9月24日午前7時30分(米東部時間)、フロリダ州ケネディ宇宙センターからSpaceXのファルコン9ロケットが打ち上げられました。搭載されたのは以下の3つのミッションです。
- IMAP(Interstellar Mapping and Acceleration Probe)
- Carruthers Geocorona Observatory
- NOAAのSWFO-L1(Space Weather Follow On-Lagrange 1)
これらのミッションは、太陽が地球や太陽系全体に与える影響=「宇宙天気(スペースウェザー)」を調べるためのものです。打ち上げ直後に全ての衛星が正常に分離し、地球への通信も確認されました。
ミッションの目的と役割
1. IMAP ― 太陽風と宇宙の境界を探る
- 太陽から吹き出す粒子(太陽風)を観測。
- 太陽系を取り囲む「ヘリオスフィア」の境界を調べ、銀河宇宙線からの防御機能を理解する。
- 宇宙環境が人類や技術に与える影響を解明。
2. Carruthers Geocorona Observatory ― 地球の外気圏を観測
- 地球最外層の「ジオコロナ(外気圏)」の紫外線輝きを観測。
- 太陽嵐や季節変動に応じた外気圏の変化を記録。
- 1972年のアポロ16号で撮影された初の地球外気圏画像を引き継ぐ形で、宇宙科学者ジョージ・カラザース博士の功績を継承。
3. SWFO-L1 ― 初の24時間体制の宇宙天気監視衛星
- 地球と太陽の間にある「ラグランジュ点L1」(地球から約150万km)に配置。
- 常時太陽を監視し、正確かつ迅速な宇宙天気予報を可能にする。
- 電力網やGPS、通信衛星など地上インフラの保護に直結。
宇宙探査と社会への意義
NASAとNOAAは「月や火星への有人探査時代」に備え、宇宙天気から人類を守る体制を構築しようとしています。太陽活動は、人工衛星の障害や電力網の停止など地上生活にも影響を与えるため、3つのミッションは「人類にとっての宇宙防災インフラ」と言えます。
- 地球規模の安全確保:GPS・電力網・通信など生活基盤のリスク低減。
- 有人探査の安全性:月・火星探査に向けた「宇宙版サバイバルガイド」として活用。
- 科学的意義:太陽活動の起源から宇宙の果てに至るまで、空間環境を包括的に理解。
今後のスケジュール
- 各衛星は今後数か月かけてL1ラグランジュ点に到達。
- 2026年1月頃に到着予定。
- 機器のチェックと校正を経て、本格的な観測が開始される。
日本への示唆
この取り組みは、日本の宇宙・防災政策にとっても重要な示唆を与えます。
- 宇宙天気の影響は世界共通の課題であり、日本の人工衛星・通信網も同様にリスクを負う。
- 今後、日本の宇宙機関や大学が国際協力を強化することで、研究・技術開発分野での参画機会が広がる。
- 「宇宙天気防災」は将来の宇宙探査産業だけでなく、日常生活や経済活動の安定にも直結する。
✅ まとめ:
今回の打ち上げは、太陽活動の解明と「宇宙天気から人類を守る仕組みづくり」に向けた歴史的な第一歩です。IMAP、Carruthers、SWFO-L1は、それぞれ異なる角度から宇宙環境を解き明かし、地球と人類の安全を守る使命を担っています。