
NASA・ISRO共同衛星「NISAR」、地球表面の初レーダー画像を公開
世界最強の地球観測レーダー衛星が初成果
NASAとインド宇宙研究機関(ISRO)が共同開発した地球観測衛星 NISAR(NASA-ISRO Synthetic Aperture Radar) が、地球表面の初めてのレーダー画像を送信した。これらは科学運用開始を前にした試験画像だが、将来の研究に大きな可能性を示している。
NISARは2025年7月30日にISROのロケットで打ち上げられ、9月中旬に高度747kmの運用軌道へ投入された。今後11月から本格的な科学観測を始める予定だ。
公開された初画像
- メイン州マウント・デザート島(8月21日撮影)
- 緑:森林
- マゼンタ:地面や建物など硬い表面
- 北東部のマゼンタ領域はバー・ハーバーの町
- 幅5mの物体まで識別可能なLバンドSARにより、細い水路や小島まで鮮明に捉えられている。
- ノースダコタ州フォレスト川周辺(8月23日撮影)
- 川沿い:森林と湿地
- 周囲:牧草地や大豆・トウモロコシ畑
- 円形の模様はセンターピボット灌漑の農地を示す
科学的意義
NISARは Lバンド(25cm波長) と Sバンド(10cm波長) の両方を搭載する世界初の衛星で、森林の樹冠下や氷床の動き、土壌水分まで観測可能。これにより:
- 地震・火山・地滑り前後の地表変動の精密測定
- 森林・湿地の消失や再生の監視
- 農作物の成長状況や灌漑の進捗把握
- 氷床や氷河の動態解析
といった幅広いデータを提供する。
国際協力の成果
NISARは米印両国の緊密な協力で実現した。
- NASA JPL:LバンドSAR、通信システム、データ処理装置を提供
- ISRO:SバンドSAR、衛星バス、打ち上げロケットを担当
- 打ち上げ・追跡はインド国内のサティシュ・ダワン宇宙センター、ならびに世界規模の地上局ネットワークが支える
展望
NISARは12日ごとに地球全域の陸地と氷床を2回観測し、膨大なデータを収集する予定だ。これにより、災害対応から農業・インフラ管理、さらには気候変動研究まで幅広い分野に貢献する。
NASAの科学ミッション局ニッキー・フォックス氏は「今回の画像は序章に過ぎない。NISARは地球の変化をかつてない詳細さで明らかにし、世界中の意思決定者に重要な情報を提供するだろう」と強調した。