米航空宇宙局(NASA)は「今日の天文写真(APOD)」2026年9月15日分として、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)とハッブル宇宙望遠鏡による観測データを組み合わせた、渦巻銀河「M64(メシエ64)」の新たな合成画像を公開した。M64は明るい中心核を横切る黒っぽい帯状の暗黒星雲が特徴的なことから、「ブラックアイ銀河」の愛称でも知られる天体だ。
今回の画像は、ハッブルが備える3台の観測装置(広視野カメラ3=WFC3、掃天カメラ=ACS、宇宙起源分光器=STIS)による紫外線・可視光・近赤外線のデータに、ウェッブの近赤外線カメラ(NIRCam)と中間赤外線観測装置(MIRI)による観測データを重ね合わせて作成された。MIRIがとらえた赤く表示されている暗黒帯は、周囲で生まれたばかりの若い星々からの光を吸収し、赤外線として再放射している領域にあたるという。
解析の結果、可視光画像ではまったく見えなかった数十個ものコンパクトな星団が、ウェッブの赤外線観測によって新たに浮かび上がった。その多くは誕生からまだ500万年に満たない、銀河の中でも特に若い星団とみられている。さらに、M64のトレードマークである暗黒帯は一様な塵の雲ではなく、無数の繊維状構造や塊が入り組んだ複雑な網目模様を成しており、銀河内部で互いに逆方向に回転する二つのガスの流れがぶつかり合う境界面での重力的な乱れを反映しているとみられる。この内側と外側のガスの「逆回転」自体、過去にM64がより小さな銀河と合体した際に生じた可能性が高いという。JWSTとハッブルを組み合わせた同様の観測手法は、先ごろ発表された海王星より遠い極小天体27個の発見でも活用されており、両望遠鏡の連携観測が銀河から太陽系外縁部まで幅広いスケールの研究を後押ししている。
M64は地球からおよそ1700万光年離れたかみのけ座の方向に位置し、口径の小さなアマチュア望遠鏡でもその特徴的な暗黒帯を観測できることから、天文ファンの間でも人気の高い観測対象として知られてきた。今回のようにウェッブとハッブルという性格の異なる二つの宇宙望遠鏡のデータを組み合わせることで、これまで可視光観測だけでは見えなかった銀河内部の星形成活動やガスの力学構造が、より詳細に解き明かされつつある。
出典: NASA Science「APOD: 2026 September 16 – Webb’s View of M64」(2026年9月16日)