ハーバード・スミソニアン天体物理センターのオリバー・ザイアー氏らが、初期宇宙を再現する大規模シミュレーション「Lumina(ルミナ)」を発表しました。研究者らは、これを初期宇宙の最大級かつ最も詳細なシミュレーションの一つと位置づけています。成果は英国王立天文学会の月報(MNRAS)に掲載されました。
Luminaが追うのは、宇宙の最初の約20億年の歴史です。計算の対象は一辺およそ15億光年の立方体にあたる領域で、これまでの同種のシミュレーションの100倍を超える体積に及びます。計算には米オークリッジ国立研究所のスーパーコンピュータ「フロンティア」が使われ、1万5000基を超えるGPU(画像処理装置)が動員されました。
このシミュレーションでは、ガス、ダークマター(暗黒物質)、そして放射がどのように相互作用して宇宙が進化したかを計算します。研究チームによると、宇宙規模の「放射流体シミュレーション」としては最大で、水素に加えてヘリウムが電離していく過程(再電離)をリアルタイムに捉えて、その影響をモデルに反映させたのも初めてだといいます。再電離とは、宇宙を満たす中性のガスが、星や銀河の光によって電離していく現象のことです。
目的は、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡や今後のナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡の観測結果と比べられる、詳しい予測を用意することです。ザイアー氏は、ウェッブ望遠鏡によって初期宇宙は新しいフロンティアになったと述べ、理論を具体的な予測に変える必要があると説明しています。共著者のテキサス大学ダラス校のアーロン・スミス氏は、銀河などの光る天体を分解して見分けながら、これほど広い範囲で水素とヘリウムが現在の姿へ変わる様子を追えるのは初めてだとしています。
チームは今後、銀河どうしの間でのガスの動きや、強い星形成などの研究にもLuminaを使う予定です。観測が先行する初期宇宙の研究で、理論の側からも検証できる土台が整いつつあります。
出典: Phys.org(スミソニアン発表)「Lumina simulation brings the early universe to life on a record-breaking scale」(2026年10月25日)