
なぜ「治療しなくてもよいがん」があると一部の医師は考えるのか
―― 若年層がん急増をめぐる検出過剰論争
記事の要点まとめ
1. 若年層で急増する「がん診断」
- 米国では1992年以降、50歳未満で8種類のがん診断が約2倍に増加
- 甲状腺がん、肛門がん、腎臓がん、小腸がん、大腸がん、子宮内膜がん、膵臓がん、多発性骨髄腫
- 乳がんなど他のがんも増加傾向
- 米国がん研究協会(AACR)は
「この増加速度は、喫煙と肺がんを除けば前例がない」と警鐘
2. 本当に「がんが増えている」のか?それとも「見つけすぎ」か
医師・研究者の間で大きな論争が起きている。
2つの見方
- ✅ 本物の増加派
- 環境毒素、肥満、超加工食品、腸内細菌叢の変化などが原因
- ⚠️ 検出過剰(オーバーディテクション)派
- 画像診断(CT、MRI、超音波)や血液検査の進歩により
「本来問題にならなかったがん」まで見つけている
- 画像診断(CT、MRI、超音波)や血液検査の進歩により
3. 死亡率が増えていないという決定的な指標
ハーバード大学のH.ギルバート・ウェルチ医師らの研究によると:
- 診断数が増えても死亡率が増えなければ、それは“危険ながん”ではない可能性が高い
- 若年層で増加している8種類のがんのうち
👉 死亡率が明確に増えているのは2つだけ- 大腸がん(死亡率 +0.5%/年、診断率 +2%/年)
- 子宮内膜がん(死亡率・診断率ともに +2%/年)
👉 それ以外のがんでは
死亡率は横ばい、または減少
4. 実例:甲状腺がんと前立腺がん
- 韓国の甲状腺がん
- 超音波検査の普及で診断が急増
- しかし死亡率は変化なし
- 診断・治療されたがんの約90%は治療不要だったと推定
- 前立腺がん
- PSA検査導入後に診断数が急増
- 死亡率は増えず
- 現在は「低リスクなら経過観察」が標準的
解剖研究の知見
- 70代男性の
- 白人男性の約1/3
- 黒人男性の約1/2
が「気づかれない前立腺がん」を持って死亡
5. 「早期発見=善」とは限らない現実
- 一部のがんは
- 自然に消える
- 成長を止める
- 一生症状を出さない
- しかし 治療後は「治療が必要だったか」を証明できない
👉 不要な治療のリスク
- 不妊
- 臓器障害
- 長期的な副作用
- 高額な医療費・フォローアップ費用
→ 経済的破綻につながることも
6. 医療側のジレンマ
- CT・MRI・超音波検査の普及
- 「別の病気を調べていたら偶然がんが見つかる」ケースが急増
- 医師の言葉「私たちは“画像を撮りすぎる社会”だ」
ウェルチ医師:
「異常は人生の一部。すべてを追いかける必要はない」
7. それでも「本物の危機だ」と主張する専門家も
- 若年層の大腸がん専門医は
症状があって受診する患者が増えていると指摘 - 治療成績が向上したため
死亡率が上がっていないだけという見方も - 環境・腸内細菌・生活習慣の研究が進行中
8. ケーススタディ:治療しなかった前立腺がん患者
- 31歳で前立腺がんと診断
- 多くの医師から「即治療しないと死ぬ」と言われる
- 専門医の勧めで積極的治療をせず経過観察
- その後がんは消失
- 20年以上再発なし
本人の言葉:
「精神的に距離を取ることにした。年ごとに向き合っている」
総まとめ(結論)
- 若年層のがん診断は確かに増えている
- しかし 多くは「命に関わらないがん」を見つけている可能性
- 重要なのは
「見つけること」より「本当に治療が必要かを見極めること」 - がんの種類によって
- 即治療すべきもの
- 経過観察でよいもの
が明確に分かれつつある
👉 「がん=即治療」という常識は、見直しの時代に入っている