
CREDIT
ESA/Juice/NavCam
LICENCE
CC BY-SA 3.0 IGO or ESA Standard Licence
「Juice探査機、NavCamティーザーで活動中の恒星間彗星 3I/ATLAS を捉える──2本の尾と活発なコマが鮮明に」
欧州宇宙機関(ESA)の木星探査機 JUICE(Jupiter Icy Moons Explorer) が、
2025年11月の観測キャンペーンで恒星間彗星 3I/ATLAS を捉えた。
本来、科学観測用ではない NavCam(航法カメラ) の“ティーザー画像”にも、
彗星の明瞭な活動が写り込み、ESAチームを驚かせたという。
■ NavCamでここまで映るとは──“四分の一だけ”ダウンロードされた画像
JUICE の科学データは 2026年2月到着予定だが、
チームは待ちきれず NavCam画像の1/4だけを先行ダウンロード。
そこには、想像以上に鮮明な彗星の姿があった。
NavCam は低解像度で航法用の装置だが、
今回の画像では次の要素がはっきり確認された:
- 明るく発光するコマ(coma)
- プラズマテイル:上方向へ伸びる電離ガスの尾
- ダストテイルの兆候:左下へ伸びる微粒子の尾(淡い)
科学カメラではないにもかかわらず“2本の尾”が識別できる点は大きな驚きだった。
■ 撮影日は 2025年11月2日──最接近の直前、彗星は最も“活動的”
- 撮影:2025年11月2日
- 最接近:11月4日(約6,600万 km)
JUICE は火星探査機より彗星から遠かったが、
近日点通過直後で活動が最高潮のタイミングだったため、
ガスや塵の放出が非常に鮮明に写ったと推測される。
■ 本番データは2026年2月に到着予定
今回の NavCam 画像はあくまで“前菜”で、本番は以下の5つの科学機器。
● 観測に使われた5つの科学機器
- JANUS:高解像度光学カメラ
- MAJIS:分光撮像
- UVS:紫外線分光
- SWI:サブミリ波で組成・温度を分析
- PEP:粒子・プラズマ観測
これらが取得したデータは
2026年2月18日および20日に地球へ到着予定。
● データが遅れる理由
JUICE は現在、
高利得アンテナを太陽熱から本体を守る“日傘”として使用しており、
通信は小型の中利得アンテナで低速送信しているため。
■ 科学的意義:彗星の“最も活動的な瞬間”を JUICE が捉えた
10月に火星軌道機が捉えた画像よりも、
今回の NavCam 画像では彗星の活動レベルが高く、
- ガス噴出
- コマの拡大
- 2本の尾の構造形成
といった変化が明瞭に視認される。
JANUS・MAJIS・UVS などの科学データでは、
この活動がさらに詳細に解析できると期待されている。
■ 今後の見どころ
科学データが到着すれば、次が明らかになる:
- 彗星核の組成
- ガス成分のスペクトル
- プラズマの挙動
- ダストの粒子分布
- 彗星活動の“ピーク期”の詳細構造
恒星間彗星 3I/ATLAS をこれほど多角的に観測できる例はほとんどなく、
今回の Juice 観測は天文学史上きわめて貴重なデータセットになる可能性が高い。