「地震計で“宇宙ゴミ”の落下を追跡できる」(2026年1月24日/Tereza Pultarova)のまとめ記事
地球へ再突入する宇宙ゴミ(老朽化した衛星やロケット残骸)は、平均して1日3個以上。しかし、どこに落ち、どれほど地表に到達しているのかは、実はよく分かっていません。
この課題に対し、地震計(地震センサー)で超音速物体のソニックブームを捉える新手法が、有力な解決策として注目されています。

落ちてくる衛星は見えるのか?地震計で追跡する宇宙ゴミの正体
■ 背景:従来手法の限界
- これまでの監視はレーダーや光学望遠鏡が中心。
- しかし高度数百km以下では大気との相互作用がカオス化し、再突入経路の特定が難しい。
- 2022年には中国ロケットの再突入予測で、スペインとフランスが空域閉鎖(最終的には太平洋へ)。監視精度の限界が露呈。
■ 新手法の中身
- **ジョンズ・ホプキンス大学とインペリアル・カレッジ・ロンドン**の研究チームが開発。
- 地震計は地震だけでなく、爆発・交通振動・海中生物の音まで検知でき、しかも全球に高密度で配置、データは公開されている。
- 超音速で大気を通過する物体が生むソニックブームを解析し、再突入の軌跡・速度・角度・分解過程を復元。
■ 実証例:神舟17号モジュール
- 2024年4月、神舟17号から分離した約1.5トンのモジュールを追跡。
- カリフォルニア州の127基の地震計データから、米宇宙軍予測より約40km北の経路を通過した可能性を特定。
- 破片はベーカーズフィールド~ラスベガス間に落下した可能性が示唆(地表到達は未確認)。
■ 何が変わる?
- 予測(forecast)ではなく、事後の高精度トラッキングが可能に。
- 有毒・危険な破片の回収までの時間を「数日~数週間」→「数分~数時間」へ短縮。
- 1978年のソ連原子炉搭載衛星の放射性破片散乱事故のような事例への対応力向上。
■ スタ―リンク論争にも一石
- SpaceXはStarlinkが再突入時に完全燃焼すると主張。
- 研究者は燃料タンクやバッテリーなど“生き残り得る部材”を指摘。
- 地震計+将来的な音響センサー(数千km先まで検知)を組み合わせれば、太平洋上での再突入も検証可能に。
■ 今後の展望
- 海上での観測空白を埋め、実際にどれだけ地表に到達しているかを定量化。
- 航空機リスク評価や環境影響評価の精度向上。
- 再突入の物理理解が進み、設計段階での安全対策にもフィードバック。
掲載誌:Science(2026年1月22日)
地震計という“既存インフラ”を転用する発想が、宇宙ゴミ監視の実効性を一段引き上げた。今後は音響ネットワークとの統合がカギ。