
🧬 まとめ記事:宇宙飛行が人間の「ダークゲノム」を活性化 ― 幹細胞老化の新たな証拠
出典:Jacopo Prisco(CNN / Cell Stem Cell, 2025年9月6日)
🚀 宇宙飛行で幹細胞が加速老化
サンフォード幹細胞研究所のカトリオナ・ジェイミソン教授率いる研究チームは、国際宇宙ステーション(ISS)の補給ミッション(2021〜2023年、SpaceXによる)で幹細胞を観察。その結果、宇宙空間では幹細胞が「眠らずに過剰に活動し続ける」ことで、機能低下と老化の加速が起こることが明らかになった。
- 幹細胞は本来 80%の時間を休眠状態で過ごす必要がある
- 微小重力と宇宙放射線の影響で「休めず」、疲弊・老化
- 新しい細胞を作る能力が低下し、免疫系の弱体化につながる可能性
🌑 「ダークゲノム」の活性化
研究で特に注目されたのは、通常は眠っているDNAの領域(反復配列=ダークゲノム)が宇宙で活性化してしまう現象だ。
- ダークゲノムは古代のレトロウイルスが人類のゲノムに組み込まれたもの(DNAの55%を占める)
- 強いストレス下で活性化すると、細胞は「死のスパイラル」に陥り、急速に老化
- これは白血病の前段階にある患者の細胞でも観察される現象で、がん研究との関連性も示唆
🔬 実験方法 ― AI搭載バイオリアクター
- 材料:股関節置換手術を受けた患者の骨髄由来幹細胞
- 装置:携帯電話サイズのバイオリアクター(AIモニタリング搭載)
- 手法:無菌スポンジ上で細胞を培養し、ISSでリアルタイム観測
- 結果:45日間の宇宙滞在で幹細胞が疲弊、エネルギー枯渇、老化の兆候
🧩 回復と応用の可能性
- 回復性:帰還後1年ほどで幹細胞は機能を取り戻す傾向
- 医療応用:がん患者の幹細胞も同様のストレス損傷を示すため、治療法開発に応用可能
- 予防策:バイオリアクターを「幹細胞のアバター」として活用し、宇宙飛行に適した個人や対策薬の検証が可能
🧑🚀 宇宙探査への影響と課題
- 長期ミッションでは血液・免疫系が弱まり、宇宙飛行士の健康リスクが増大
- 放射線・微小重力が細胞老化を直接引き起こす確かな証拠を提示
- 対策研究はそのまま地上の医療(特に老化やがん治療)にもつながる
ただし、研究者の中には「条件次第で幹細胞の若返り遺伝子が活性化する可能性」も指摘しており、宇宙が必ずしも老化だけを促進するわけではないことも議論されている。
🌍 まとめ
この研究は、宇宙飛行が人間の細胞レベルに与える影響をより鮮明に示すものだ。
- 宇宙=老化の加速リスク
- ダークゲノム=ストレス下で暴走する隠れたDNA
- 応用=がん研究や再生医療に新たな道
宇宙飛行士の健康管理だけでなく、私たち地球人の医療と老化研究にも直接的な恩恵をもたらす可能性を秘めている。