まとめ記事|IBM × Cisco「量子インターネット」構想を正式発表:2030年に分散型・大規模・耐故障量子コンピュータを接続へ

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By arigato_team

まとめ記事|IBM × Cisco「量子インターネット」構想を正式発表:2030年に分散型・大規模・耐故障量子コンピュータを接続へ

まとめ記事|IBM × Cisco「量子インターネット」構想を正式発表:2030年に分散型・大規模・耐故障量子コンピュータを接続へ

2025年11月20日、IBM と Cisco が、
「大規模・耐故障量子コンピュータをネットワーク接続し、分散量子コンピューティングを実現する」
という歴史的コラボレーションを発表した。

目標は 2030年までに初の分散量子ネットワークの実証
最終的には 量子インターネット につながる未来構想であり、量子業界の転換点となる。


1. 何を作ろうとしているのか?:分散型・ネットワーク量子コンピュータ

IBM × Cisco の協力は次のビジョンを描いている。

✔ 複数の大規模・耐故障量子コンピュータ(FTQC)を“つなぐ”

✔ 1台では不可能な計算量をネットワークで分散して処理
✔ 10万~数十万量子ビット規模の計算、さらには“兆(trillions)ゲート級”の量子演算へ

つまり、現在の QPU(量子処理装置)開発の「スケールアップ領域」だけではなく、

量子を“ネットワーク化”してスケールアウトする新しいアーキテクチャの確立

を目指している。


2. 2030年までに「複数QPUの量子もつれ接続」を実証へ

IBM と Cisco が掲げる具体的な3ステップ:

① 〜2030年:最初の実証実験

  • 複数の量子コンピュータを接続し
  • 別々の極低温環境にある量子ビットを 量子もつれ で共有
  • ネットワーク越しに量子情報をやり取りする

これは量子インターネットの基礎技術そのもの。

② 必要となるハードウェア発明

  • マイクロ波 ↔ 光変換器(transducer)
  • 超高速・超低遅延の量子ネットワークプロトコル
  • 量子状態を壊さず運搬する量子ネットワークノード

③ QPU とネットワークを結ぶ「QNU(Quantum Networking Unit)」を開発

IBM が開発する QNU は、
止まっている量子情報を“飛ばす量子情報”へ変換するインターフェース」 である。

Cisco の量子ネットワークは、
QNU 間に必要なタイミングで量子もつれを配布し、計算を同期させる役割 を担う。


3. Cisco の戦略:量子データセンター構想

Cisco が描く未来の量子データセンターは、次の特徴を持つ。

✔ 量子状態を壊さずに配送(entanglement distribution)

✔ QPU 間で量子テレポーテーション
✔ サブナノ秒レベルの同期
✔ ダイナミックな経路再構成(Quantum Routing)

これは、

“クラウド時代の量子版インターネット層”を Cisco が担う宣言

とも言える。


4. スケールアップ(1台を巨大化) × スケールアウト(複数台を接続)を両立

Jay Gambetta(IBM Quantum Research)はこう述べている:

「IBM のロードマップは“巨大なFTQCを1台で作る”ことを目指している。
Cisco との協力により、“複数台をつないでさらに拡張”できる。」

つまり、

  • IBM:巨大な量子マシンを作る会社
  • Cisco:その量子マシン同士をネットワークでつなぐ会社

という完璧な補完関係が成立する。


5. 今後の技術ステップ:建物間 → データセンター間 → 都市間 → 地球規模

IBM と Cisco は、次の順番で量子ネットワークを拡張していく予定:

  1. 同じ施設内の複数QPUを接続(2028〜2030)
  2. ビル間・データセンター間接続(2030以降)
  3. 都市規模の量子ネットワーク(2030年代後半)
  4. 量子インターネット(地球規模)へ発展(2030年代後半〜2040)

これが完成すれば、クラシックのインターネット誕生に匹敵する技術革命となる。


6. 量子インターネットがもたらす未来

量子ネットワークが確立すると、次の未来が開ける。

◆ 超巨大最適化問題の高速解決

経路最適化、金融、物流、エネルギー管理など

◆ 次世代の材料・薬の設計

高精度シミュレーションにより創薬が革命的に加速

◆ 超安全な通信

量子暗号と量子テレポーテーションを組み合わせた“物理的に解読不可能”な通信

◆ 高精度の地震・気象・環境センサー網

量子センサーの分散ネットワークにより、地球規模の観測が可能


7. 米国 DOE との連携:SQMS を通じた国家プロジェクト級の取り組み

IBM はすでに DOE(エネルギー省)の量子研究センター SQMS と連携し、
複数QPUの接続実験を3年以内に実施予定

国家レベルの量子インフラ構築が動き始めている。


8. 一言まとめ(最短版)

IBM×Cisco は、2030年までに“量子コンピュータ同士がつながる未来”を実証し、
2030年代後半に「量子インターネット」の基台を構築する。
これはクラウド以来の最大級インフラ革命となる。


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