2025年8月、NASAの火星探査車「キュリオシティ(Curiosity)」は火星着陸から13周年を迎え、新たな機能とともに今なお探査を継続中です。
新たに与えられたのは、「自律性の向上」と「マルチタスク能力」。限られた電力を有効活用し、火星の古代環境や生命の痕跡を探る科学探査の効率がさらに向上しています。
以下は、NASAの火星探査車「キュリオシティ」の13周年に関する記事の日本語まとめ記事です。

【13年目の進化】火星探査車キュリオシティ、電力効率を高めマルチタスク能力を獲得
◆ 少ない電力でより多くの科学成果を
キュリオシティは原子力(MMRTG)による電力供給で稼働しており、日照に依存するソーラー方式とは異なり、安定した電力を長期間供給できます。しかしプルトニウムの自然崩壊により出力は徐々に減少するため、効率的な電力管理が不可欠です。
JPL(ジェット推進研究所)の技術チームは、以下のような省エネ技術を導入しました:
- 複数タスクの同時実行(マルチタスク)
→ 例えば、走行しながらデータ送信や撮影を同時実行することで、ヒーター稼働時間を短縮し電力節約。 - 自律的に早く“おやすみ”
→ 作業が早く終わった場合、自動的に早めのスリープモードに入り、次の日の充電負担を軽減。
こうした工夫により、日々の科学活動に割ける電力と時間が増加し、より多くの観測や分析が可能になっています。
◆ 火星探査の新たな舞台:ボックスワーク地帯
最近キュリオシティは、シャープ山の一帯に広がる「ボックスワーク(箱状構造)地形」に到達しました。この地形は数十億年前の地下水の流れによって形成されたとされ、当時の火星が生命を宿す環境であった可能性を探る上で重要な手がかりとなります。
7月24日には、かつて水と風によって形成されたと思われるサンゴのような岩石を撮影。これは火星の乾燥化が進行するなかでも、生命に適した環境がどこまで持続したかを探る研究の一環です。
◆ 工夫とアップデートで延命を図る
キュリオシティは運用中もソフトウェアの更新や新機能追加が行われており、いくつかの問題にも柔軟に対応しています。
- ドリル装置の再設計:機械的不具合により、サンプル採取方式を変更
- マストカム(Mastcam)カメラのフィルター故障:代替撮影方式を開発
- ホイール(車輪)の損傷対策:AIアルゴリズムによる摩耗最小化運転制御
これまでに35km以上の走行実績を誇り、仮に車輪に穴が開いた場合も、トレッド部分を切除して走行継続できる設計がされています。
◆ 探査はまだ続く
NASAによれば、キュリオシティのMMRTG電源は今後も長年にわたって動作が可能と見られており、さらなる火星の探査、過去の気候変動、生命の痕跡解明への貢献が期待されています。
▼ まとめ
- キュリオシティは13年目でも進化中:自律性とマルチタスク能力で省エネ探査
- 古代の水の痕跡が残る新領域を調査:生命存在の可能性を探る
- ソフトウェア更新やAI制御で“延命”成功
- 今なお火星で現役続行中
🔭 関連情報:
- ミッション運用:NASAジェット推進研究所(JPL)
- 電力供給:MMRTG(多目的放射性同位体熱電発電機)
- 写真・機器:MastcamはMalin Space Science Systemsが開発・運用