月面から宇宙生命探査へ:名写真「Earthrise」のクレーターが果たした新たな役割

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By arigato_team


月面から宇宙生命探査へ:名写真「Earthrise」のクレーターが果たした新たな役割

「Earthrise(地球の出)」と聞いて、心に浮かぶ壮大な宇宙の光景。その写真に映る有名な月面クレーターが、今、新たな宇宙探査に貢献しています。

1968年、アポロ8号のウィリアム・アンダース飛行士が撮影した「Earthrise」写真により知られる月の裏側のクレーター「アンダース・アースライズ(旧称Pasteur T)」。今この場所が、ヨーロッパ宇宙機関(ESA)の探査機「JUICE(Jupiter Icy Moons Explorer)」の観測テストに選ばれ、再び注目を集めています。

JUICEは2023年に打ち上げられ、最終的に2031年に木星に到達予定。木星の衛星(エウロパ、ガニメデ、カリスト)の氷の下に生命の痕跡を探すという壮大なミッションを担っています。その前哨として、月面を対象に観測機器「RIME(氷衛星探査用レーダー)」の性能テストを行いました。

静寂の中で8分間の観測

このRIMEレーダーは、氷に覆われた天体の内部構造を探るため、非常に微細な電波の変化を「静かに」読み取る必要があります。そこでESAは、全ての他の観測機器を停止し、アンダース・アースライズ・クレーター上空で8分間にわたる“静寂の観測”を実施しました。

その結果、月面の地形を正確に捉えることに成功。NASAの「LOLA」レーザー高度計の過去データと見事に一致し、RIMEの計測精度を裏付けました。これにより、JUICEが木星衛星の探査に本格的に対応できることが証明されました。

次なる目的地は金星、そして木星へ

JUICEは現在、金星の重力を利用して加速する航路に入っており、最終的には木星の巨大な衛星群を35回にわたりフライバイ観測。その後、2034年から2035年にかけてガニメデの周回軌道へと移行し、本格的な地中探査を行う予定です。

この探査が成功すれば、太陽系内の他の天体に生命の兆候があるかを探る大きな一歩になるかもしれません。


アイコニックなクレーターが、再び歴史の最前線に。
宇宙探査のロマンと科学の進化が、静かに交差した瞬間です。

※参考記事「EarthriseクレーターとJUICE探査機による地球外生命探索

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