以下はSpace.com(著者:Josh Dinner、2025年11月初旬公開)の長編調査記事
「NASA is sinking its flagship science center during the government shutdown — and may be breaking the law in the process, critics say」の日本語まとめ記事です。

🚨 NASAゴダード宇宙飛行センター、前代未聞の縮小へ
― 政府閉鎖の裏で進行する再編、違法行為の疑いも
🏛️ 概要:政府閉鎖の陰で進む“密かな破壊”
米メリーランド州のNASAゴダード宇宙飛行センター(GSFC)が、
大規模な閉鎖と人員削減の渦中にある。
職員や内部文書によると、NASA上層部は議会がまだ承認していない
2026年度大統領予算案(FY26 PBR)を“違法に先行実施”しており、
その結果、NASAの科学ミッションの中枢が崩壊しつつあるという。
この問題は、2025年9月に米上院商業・科学・運輸委員会の
マリア・キャントウェル上院議員による報告書でも取り上げられ、
「憲法に反するNASA解体の陰謀」と非難された。
「多くの職員が“これは違法だ”と認識しているが、
上層部の命令に逆らえば職を失う恐れがある。」
— ゴダード所属エンジニア「ウェンディ」(仮名)
🌌 ゴダード宇宙飛行センターとは
ゴダードは、ハッブル宇宙望遠鏡、ジェームズ・ウェッブ望遠鏡、
OSIRIS-REx小惑星サンプルミッションなど、
NASA科学探査の象徴的プロジェクトを担ってきた拠点。
約1万人(うち7,000人が契約職員)が在籍するNASA最大の科学センターだ。
しかし、トランプ政権2期目の発足以降、
科学・教育・多様性関連部門への締め付けが強まり、
特に地球科学・気候研究を行う部署が標的となった。
「“気候”という単語自体がNGワードのように扱われている。」
— GISS研究者「クレア」(仮名)
🌍 GISS閉鎖 ― 最初の犠牲者
ニューヨークのゴダード宇宙研究所(GISS)は、
気候変動モデルや地球温度観測で世界的に重要な拠点だった。
だが2025年春、1か月の猶予で閉鎖命令が下され、
職員はコロンビア大学キャンパスから退去。
一部機材は研究者が自費で車に積み、他拠点へ夜通し輸送したという。
「私たちはNASA史上2つ目の“閉鎖されたセンター”になりました。」
— クレア
この措置は、職員組合GESTAとの労働協約違反の可能性があり、
NASAは依然として建物賃料を払い続けているという。
💰 NASA予算の“大幅削減”と政治的圧力
2026年度大統領予算案では、
- NASA予算が24%削減
- 科学分野予算が47%削減
- 教育・STEM部門(OSTEM)廃止
という前例のない規模の縮小が提案された。
惑星協会(Planetary Society)はこれを
「前代未聞・無戦略・浪費的」と批判。
CEOのビル・ナイは議会前で次のように訴えた:
「これは“探査の遅れ”ではなく、“科学の終焉”です。」
この削減案では、稼働中の観測衛星チャンドラX線望遠鏡、
ジュノー探査機、MAVENなども停止対象とされた。
⚖️ 違法実施疑惑 ― 「議会より先に動いたNASA」
内部メールによれば、NASAは6月時点でFY26予算に基づく再編を指示。
職員に「早期退職プログラム(DRP)」や「自主離職奨励金」を勧めた。
「議会が承認する前に、大統領予算案を既成事実化している。」
— キャシー・マグラス(天体物理学者)
上院報告書では、NASAとOMB(行政管理予算局)が協力し、
予算の“先取り執行”と資金の違法留保(インパウンド)を
計画していると指摘している。
NASA側はこれを否定。
「我々は法令に従っており、議会の権限を尊重している。」
— アミット・クシャトリア(NASA副長官)
👥 職員削減と士気崩壊
NASA全体で約4,000人(20%)がDRPに応じ退職。
ゴダードでは約17%(447人)が離職した。
実際には再編対象を含めると約1,000人(32%)が離職したとされる。
「誰もNASAを去りたくなかった。ただ生き延びるためだった。」
— ウェンディ
専門技術者の離脱により、
安全性・データ管理・知識継承が崩壊しつつある。
元宇宙飛行士テリー・バーツは警告する:
「ハードウェアが破棄され、科学者が去れば、
その知見は二度と取り戻せない。
NASAの安全文化そのものが危険にさらされている。」
🧱 設備閉鎖と“ゴダード解体”
2025年秋、ゴダードでは次々と施設閉鎖通知が発出された。
- 健康管理施設(10月末閉鎖)
- 職員食堂、カフェ、モータープール(10月1日閉鎖)
- ビジターセンター(一般公開停止)
また、20年計画で進めていた「マスタープラン」を
たった6か月に短縮する指令が発令。
2026年3月までに敷地の約半分を放棄する見通し。
内部地図では、建物61棟の解体・12棟の売却が加速中で、
実験装置やデータ設備は「放棄または廃棄」とされた。
「数千万ドル規模の資産と何十年の研究成果が失われる。」
— 技術者「ピーター」(仮名)
💥 労働組合の排除
労働組合GESTAは施設閉鎖に対し交渉を続けていたが、
トランプ大統領の大統領令(国家安全保障を理由に)で
NASAが団体交渉権を持つ機関リストから除外。
全てのNASA労組が実質的に禁止された。
「安全を守る声を消すことは、NASAの命綱を断つ行為だ。」
— GESTA代表 モニカ・ゴーマン
🏚️ 政府閉鎖下での“密室移転”
9月末の政府閉鎖と同時に、ゴダードでは
「閉鎖中にも施設を片付けよ」との異例の通達が出た。
職員は自費で機材を梱包し、移転費用をプロジェクト経費に計上するよう指示された。
「本来なら研究安全確保のための停止期間なのに、
実際は“解体作業”を続行している。」
— ピーター
主要施設Building 19(電磁無響室などを含む)は完全封鎖され、
実験装置の一部は廃棄予定。
すでに建物19・20・30・32が影響を受けている。
🔚 「沈みゆくNASA科学の心臓」
現在、NASA職員の間では「ゴダードが切り捨てられた」との感覚が広がっている。
中心的な科学拠点が縮小されることで、
宇宙科学、地球観測、さらには安全文化までもが瓦解しつつある。
「ゴダードは、NASAの科学的能力の半分を失いつつある。
もはや元の姿には戻れないだろう。」
— ピーター
「いま国中で、“法は上層部には通用しない”という風潮が広がっている。
それがNASAにも及んでいるのです。」
— ウェンディ
🧭 🚨 NASAゴダード宇宙飛行センターのまとめ:崩壊の構図
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 問題の発端 | NASAが議会未承認のFY26予算を先行実施 |
| 主な影響拠点 | ゴダード宇宙飛行センター(GSFC)、GISS(NY) |
| 主な被害 | 施設閉鎖・職員削減・科学予算47%減 |
| 違法性の指摘 | 上院報告書「議会権限の違法侵害」 |
| 労働問題 | 組合GESTAの活動停止、大統領令で団体交渉権剥奪 |
| 科学的損失 | 衛星・観測ミッション41件中止、知見の喪失 |
| 現場の懸念 | 安全・研究継続性・士気の崩壊 |
| 今後の見通し | 2026年3月までにGSFC敷地の半分放棄予定 |
この事態は、NASA史上最大規模の組織的再編と科学的後退を意味する。
アポロ時代以来の“科学の砦”ゴダードが沈む今、
米国の宇宙科学は重大な転換点を迎えている。