2025年8月5日、NASAは多様な軌道への低コスト輸送を実現するため、6社に軌道輸送ビークル(Orbital Transfer Vehicle:OTV)に関する研究を発注したと発表しました。総額最大約140万ドルの固定価格契約で、合計9件のスタディが進められます。
この取り組みは、NASAの科学ミッションのコスト削減と、多目的な宇宙輸送力の向上を目的としたものです。

【商業宇宙企業に新たなチャンス】NASA、軌道輸送ビークル(OTV)研究に6社を選定
◆ 採択された6社と研究内容
企業名 | 研究内容の概要 |
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Arrow Science and Technology(テキサス州) | パートナーのQuantum Spaceの「Ranger」により、低軌道から月軌道までの複数目的地への迅速輸送を研究。 |
Blue Origin(フロリダ州) | 2件の研究を実施。「Blue Ring」は高機動な大型輸送プラットフォームで、地球静止軌道・月軌道・火星・深宇宙まで対応。もう1件は「New Glenn」ロケットの上段を活用した輸送研究。 |
Firefly Aerospace(テキサス州) | 「Elytra」シリーズのOTVで、オンデマンド輸送・撮像・通信・月軌道での長期運用を提案。特に「Elytra Dark」は5年以上の月軌道運用が可能。 |
Impulse Space(カリフォルニア州) | 「Mira(高推力)」と「Helios(高エネルギー)」の2タイプのビークルで、低軌道から中軌道・地球静止軌道・それ以上への高速輸送を実現。 |
Rocket Lab(カリフォルニア州) | 「Neutronロケットの上段」と、ExplorerをベースとしたOTVの2件を研究。中軌道・静止軌道・月・火星・小惑星への長期輸送を想定。 |
United Launch Alliance(コロラド州) | 「Centaur V上段」の拡張運用で、複数衛星を2つの異なる月軌道に直接投入できる能力を評価。追加のロケット段なしで達成可能。 |
◆ 背景と目的:「リスク許容型ミッション」からの拡張を目指す
NASAケネディ宇宙センターのジョー・ダント氏は、「複数衛星・複数軌道への同時輸送を商業企業に期待している」とし、科学探査の機会を広げつつ、費用対効果を高めるのが狙いと説明しました。
また、今回の研究はVADR契約(Venture-Class Acquisition of Dedicated and Rideshare Launch Services)の一環で実施。これは米国商業打ち上げ市場の成長促進を目的としたNASAの契約枠で、専用および相乗り打ち上げによる柔軟なミッション設計が可能になります。
◆ 今後のスケジュールと展望
- 各社の研究は2025年9月中旬までに完了予定。
- NASAはこれらの成果を基に、将来的な大型・高精度ミッションへの商業輸送拡張を検討。
- 低コストで柔軟な軌道投入手段が増えれば、深宇宙探査や地球外資源利用など多様なプロジェクトへの応用が期待されます。
▼ まとめ
- NASAがOTV研究のために6社を選定(最大約140万ドル)
- 対象は低軌道から月軌道・火星・小惑星までの多目的輸送
- 民間輸送力の活用で科学探査の柔軟性とコスト効率が向上
- 成果は今後のミッション設計や契約戦略に反映予定
🔗 関連リンク
詳しくはNASA Launch Services Program公式サイトをご覧ください:
https://www.nasa.gov/launchservices