
NASA探査機PUNCH、彗星SWANを40日間・4分間隔で連続撮影──史上最長の高頻度観測に、恒星間彗星 3I/ATLAS まで登場(動画)
彗星は普段、短期間だけ dramatical に姿を見せる“気まぐれな天体”だ。
しかし2025年、NASA の新ミッション PUNCH が、
彗星 C/2025 R2(SWAN) にこれまで例のない“長期・高頻度”の視線を向けた。
NASA の発表によると、
約40日間にわたり、4分ごとに SWAN を撮影。
この密度で彗星を追跡した例は「おそらく観測史上最長」だという。
PUNCH 主任研究者 クレイグ・デフォレスト(Craig DeForest) 氏も驚きを隠さない。
「他の彗星は“1日1回ペース”で長期間追跡されてきたが、
数分間隔で観測を続けた例は前例がない。」
さらに、この40日動画には
恒星間彗星 3I/ATLAS が最後の瞬間に横切るという、
2025年ならではの奇跡的な“共演”が収められている。
■ PUNCH が捉えた40日:SWANの“滑るような軌道”と3I/ATLASの乱入
動画は 2025年8月25日〜10月2日に撮影された多数の画像を合成したもの。
画面に映る SWAN は、
- 上方:赤い惑星 火星(Mars)
- 下方:おとめ座の恒星 スピカ(Spica)
この2つの明るい天体の間を、
ゆっくり、しかし確実に左方向へ滑るように移動していく。
画像が“黒い縫い目”のように見えるのは、
未処理画像をそのままつなげているため。
そして動画終盤、彗星の下部に突然現れるのが
恒星間彗星 3I/ATLAS。
左から右へ高速で横切り、SWANとわずかに軌跡が重なる。
太陽系外から来た彗星と太陽系内彗星が同一視野に入る──
これは極めて珍しい観測チャンスだ。
■ SWAN彗星は“発見翌日に近日点”という異例の急展開
SWAN は偶然の発見から始まった。
- 発見者:ウクライナのアマチュア天文家 Vladimir Bezugly 氏
- 発見場所:SOHO(太陽観測衛星)の公開画像
- 発見の翌日:近日点通過(4,674万マイル/7,520万 km)
初期の画像では太陽熱により氷が急速に昇華し、
青緑に輝く大きなコマが形成されていることが確認された。
■ 9月中旬:コマが“三角形のハンマー型”に変形
天文学者が注目したのは SWAN のコマの形状変化。
- 9月半ばに 三角形の“ハンマーヘッド形状” に変形
- これは 核の分裂 や 複数噴出点からのガス放出 を示唆
- 通常の円形コマが“引き伸ばされる”現象に一致
つまり SWAN は “割れかけの彗星” だった可能性がある。
■ SWAN の尾が“後ろ向きに伸びる理由”──太陽風が方向を決めている
PUNCH の画像では、SWAN の尾が
進行方向と逆向き(左側)へ押し流されているように見える。
NASA の説明によると:
- 彗星の尾(特にイオンテイル)は 太陽風の流れ をそのまま受けて形作られる
- 太陽から吹き出す荷電粒子が “向き” を決めている
太陽系を満たす太陽風の流れを可視化する“天然センサー”が彗星なのだ。
NASA ゴダードの
ジーナ・ディブラッチオ(Gina DiBraccio) 氏はこう述べる。
「複数の観測点・複数の装置で太陽の影響を見ることが、
宇宙環境の全体像を理解するための鍵です。」
太陽風理解は、
- 宇宙飛行士の安全
- 通信衛星やGPSの保護
- 宇宙天気予測
- 探査機の航行計画
にも直結する重要分野だ。
■ SWANは地球へ大接近:4000万 kmまで
2025年10月末、SWAN は
- 4,038万 km(2,510万マイル)まで地球に接近
肉眼ギリギリ、
双眼鏡や小型望遠鏡では容易に見える明るさに達した。
■ 40日タイムラプスの科学的価値
今回の観測で得られた成果は多岐にわたる。
◎ 1. 彗星の活動変化を“連続で追える”初のデータ
核活動・コマ拡散・尾の方向などの進化を分解して研究可能。
◎ 2. 太陽風の変動をリアルタイムに把握
尾の形状変化=太陽風の地図。
◎ 3. 3I/ATLAS との比較研究が可能
太陽系内彗星 vs 恒星間彗星の違いが同一環境下で比較できる。
◎ 4. 高頻度観測技術そのものの歴史的実証
PUNCH の観測方式は、今後の彗星研究の標準になり得る。
■ まとめ:2025年の“彗星観測革命”
SWAN の40日連続撮影は、
彗星研究・太陽風研究・宇宙環境モニタリング のいずれにおいても
画期的な成果となった。
そして、偶然同じ空域を通過した
恒星間彗星 3I/ATLAS の登場が、
この観測を“宇宙史的な瞬間”に変えた。