
地球に近い高度な文明を持つ異星人は存在しない? ― 最新研究の示す「3万3千光年の距離」
研究の背景
オーストリア科学アカデミーのマニュエル・シェルフ氏とヘルムート・ラマー氏は、先日ヘルシンキで開催された**欧州惑星科学会議(EPSC-DPS)**で発表した研究において、「高度な技術文明が存在する可能性は従来の想定よりはるかに低い」と指摘しました。
彼らのモデルによると、生命が進化し技術文明が成立するためには、惑星にきわめて厳しい条件が必要であり、これらを満たす惑星は極めて稀だというのです。
文明誕生のために必要な条件
1. プレートテクトニクスと二酸化炭素バランス
- 二酸化炭素が少なすぎると光合成ができず、大気が逃げてしまう。
- 多すぎると温室効果で環境が破壊される。
- プレートテクトニクスが大気中の二酸化炭素を調節し、生命維持に必要な適正範囲を保つ。
ただしこのバランスは永遠に続かない。地球でも約2億〜10億年後には光合成が不可能になると予測されており、その前に文明が進化する必要があります。
2. 窒素・酸素主体の大気
- 高度文明には酸素18%以上が不可欠。
- 酸素が不足すると火の利用が困難になり、金属加工や道具製作が不可能に。
- 酸素は生物の進化だけでなく、文明形成の基盤にも直結。
研究の結論
- 生命圏(バイオスフィア)が持続する時間と文明進化に必要な時間を比較した結果、
→ 高度文明が銀河系に存在するとしても、地球から約3万3千光年以上離れている可能性が高い。 - 文明が生き残るためには最低28万年以上継続する必要があり、さらに長期でなければ他の文明と同時代に存在できない。
- つまり、人類と同時期に同じ銀河で文明を持つ存在がいる確率は極めて低いと示されています。
それでも続く探査の意義
厳しい見通しにもかかわらず、研究者たちは**SETI(地球外知的生命探査)**の継続を強く推奨しています。
「ETI(知的地球外生命)が稀であったとしても、探す以外に答えを知る方法はない。もし発見できれば、人類史上最大の科学的ブレイクスルーになるだろう」
― マニュエル・シェルフ
日本への示唆
- この研究は「地球の特異性」を改めて強調するものです。
- 生命や文明の成立条件をより深く理解することは、地球環境問題の長期的視点を持つ上でも役立ちます。
- SETIや系外惑星探査は国際的な協力が欠かせず、日本の天文学・宇宙探査技術にも大きな貢献の余地があります。
✅ まとめ:
研究によれば、地球に近い高度文明の存在可能性はほとんどなく、もし存在するとしても3万3千光年先。それでも探索を続ける価値は計り知れず、人類が「宇宙で孤独か否か」を知る挑戦は続いています。