
まとめ記事:太陽から放たれる超高速電子の「爆発的な起源」を解明 ― ソーラー・オービターが大発見
欧州宇宙機関(ESA)とNASAの共同探査機「Solar Orbiter」 が、ほぼ光速で飛ぶ高エネルギー電子(SEE=Solar Energetic Electrons)の起源を追跡し、2種類の太陽爆発がそれぞれ異なる電子群を生み出すことを突き止めました。
発見のポイント
- 衝動的イベント(impulsive):太陽表面の小規模領域から発生する太陽フレアに由来。短時間で電子が放出される。
- 緩慢なイベント(gradual):巨大なプラズマ放出である**コロナ質量放出(CME)**に関連。より広範囲かつ高エネルギーの電子群を放出。
これにより、長年推測されていた「SEEには2つの系統が存在する」という仮説が、観測データで明確に裏付けられました。
研究の方法と成果
- Solar Orbiterは太陽に接近しながら数百件のイベントを観測。
- 電子が宇宙空間を移動する「初期状態」を計測できたため、放出源の時間と場所を高精度で特定。
- 電子が地球付近で観測されるまでのタイムラグの原因も解明。これは
- 放出自体の遅れ
- 移動中の乱流や散乱による検出の遅れ
の両方が影響していることが判明。
宇宙天気への影響
- CME由来のSEEは高エネルギーで人工衛星や通信システムに深刻な被害を及ぼす可能性。
- フレア由来かCME由来かを識別できることで、宇宙天気予測の精度向上が期待されます。
- 「この知識は宇宙飛行士や人工衛星を守るために不可欠」とESAのダニエル・ミュラー氏。
今後の展望
- 2026年:ESAのSmileミッションが地球磁気圏と太陽風の相互作用を観測予定。
- 2031年:ESAのVigilミッションが太陽の側面を監視し、地球に向かう前の爆発を早期警戒。
これらの取り組みは、太陽活動の理解深化と地球防護の両面で重要な一歩となります。