従来の常識では、地球の磁場をかき乱す宇宙天気の嵐(磁気嵐)は太陽活動が原因とされてきました。しかし、まったく太陽活動が静かな状態でも、“宇宙ハリケーン(space hurricane)”と呼ばれる現象が発生し、GPSや衛星通信に深刻な影響を与えることが明らかになりました。
以下は、「宇宙ハリケーンは現実だった──静かな宇宙天気でもGPSをかき乱す“見えない嵐”」に関するまとめ記事です:
【新発見】宇宙ハリケーンは実在する──太陽嵐がなくても地磁気を揺らし、GPSを狂わせる静かな脅威
■ 宇宙ハリケーンとは?
- 地球の極域上空で発生するプラズマの渦(電磁嵐)
- 形状は地上のハリケーンと似た構造:中心に“目”、渦巻く腕、回転する流れ
- 雲や雨の代わりに、高速で動く荷電粒子と電流で構成されている
■ 2014年に初観測された「静かな嵐」
- 初の宇宙ハリケーンは2014年、アメリカの気象衛星DMSPが発見
- 地磁気が非常に穏やかな時期に突如発生
- オーロラのような光を伴い、中心は暗い“目”を持っていた
■ どんな影響があったのか?
- GPS信号がゆらぐ「シンチレーション」現象を観測(位置精度が大幅に低下)
- カナダやグリーンランドの地上磁力計では、最大400ナノテスラの磁場変化を検出
- これは小規模な地磁気嵐に匹敵
「通常の磁気嵐レベルの変化が、“太陽が静かな日”に起きていた」
──研究チーム(山東大学・Sheng Lu博士)
■ なぜ見逃されたのか?
- 通常の磁気嵐は、太陽風の磁場(IMF)が南向きになるときに発生しやすい
- しかし宇宙ハリケーンは、北向きのIMFという“活動しないはず”の条件下で発生
- 通常の宇宙天気観測では検出されにくい=見えない嵐(stealth storm)
■ 形成メカニズム:裏口から忍び込む太陽風
- 太陽風のエネルギーが、地球の磁気圏“背面のローブ”から入り込む
- これを「ローブリコネクション」と呼び、極域の上空で渦を作る
- 結果、静かに、しかし強力な電磁嵐が発生
■ なぜ私たちに関係あるのか?
- GPS、通信衛星、極域航空、衛星測位サービスなど高緯度の空間技術への依存が拡大
- これらが予兆なしに影響を受けるリスクがある
- 従来の“太陽活動ベース”の予測だけでは対応が不十分
「すべての宇宙嵐が太陽から来るとは限らない」
──Spaceweather.comによる警告
■ まとめ:宇宙ハリケーン=“見えない宇宙災害”への警戒が必要
- 今回の研究は、2025年7月発行の『Space Weather』誌に掲載
- 宇宙は静かでも、危険は潜んでいる
- 今後は、宇宙ハリケーンの発生検出技術と予測モデルの整備が急務