以下は、記事「Space Rapid Capabilities Office to put radars on sats to warn of space-bound threats」のまとめです。
🛰️ 概要:米宇宙軍、衛星に“脅威警報レーダー”を搭載へ
宇宙版「レーダー警戒システム」で敵の接近を監視
米国防総省のSpace Rapid Capabilities Office(SpRCO/宇宙即応能力局)は、
低コスト・軽量レーダーを搭載した実証衛星を打ち上げる計画を明らかにしました。
このプロジェクトは、宇宙軍(Space Force)衛星にリアルタイムの脅威警戒機能を持たせることを目的としています。
💰 計画の概要
- 契約内容:
2社に対してそれぞれ- 24か月間のSBIRフェーズ2直接助成金(Direct to Phase II SBIR)
- **各3百万ドル(約4.5億円)**を付与
- 目的:
軌道上の宇宙軍衛星に小型レーダー警報装置を実装し、接近する衛星や攻撃的行動を検知できるかを実証する。 - 軌道:
**静止軌道(GEO)**でのテストを予定。 - 契約時期:
2025年末までに契約を締結予定。
⚠️ 背景:高まる宇宙領域の脅威
- 米国は、中国やロシアの対衛星兵器(counter-space)能力の拡大を警戒。
- 現在の監視システムでは迅速な脅威検出が困難であり、
宇宙軍・米宇宙コマンドともに改善を最優先課題としています。 - 宇宙状況認識(Space Domain Awareness)は、
今や単なる防御ではなく、「軌道戦(orbital warfare)」の基盤能力として位置づけられています。
🧭 “Own-Ship Awareness”とは何か?
SpRCOが推進する概念「Own-Ship Awareness(自艦認識)」は、
衛星自身が周囲の脅威をリアルタイムに検知・識別できる機能を意味します。
航空機のレーダー警報受信機(RWR)と同様に、
- 他衛星のレーダー照射や接近を検出
- それが「追跡」か「攻撃」かを判別
- オペレーターに即時警告を送信
することで、宇宙空間での“状況優位性”を確保します。
🛰️ プロトタイプと次のステップ
- 初期プロトタイプ:
2023年にノースロップ・グラマン製の商用衛星で3機を試験打ち上げ。- SpRCOはこれを「準運用レベルの成功(quasi-operational success)」と評価。
- 特に中国の追跡能力監視に有効だったと報告。
- 次フェーズ:
今回の新型センサーは、初めて宇宙軍の純正衛星に搭載予定。
統合や運用調整が課題となる見込み。 - 将来的展開:
- 宇宙軍の新プログラム**「RG-XX」**(GSSAP後継機)への搭載を検討中。
- 小型光学センサーによる光学的脅威検出の次期SBIRも準備中。
🏗️ 組織間の連携
- SpRCOは、迅速な技術導入を目的とする国防機関。
- SpaceWERX(宇宙軍のイノベーション部門)および**米中小企業庁(SBA)**と連携し、
通常のSBIR上限額(200万ドル)を超えて支援金を引き上げ。 - これにより、より高度なセンサー統合テストを実施可能に。
⚙️ 今後の展望と意義
項目 | 内容 |
---|---|
プログラム名 | On-board Radar Threat Warning Demonstration |
主導機関 | Space Rapid Capabilities Office(SpRCO) |
協力機関 | Space Force、SpaceWERX、SBA |
契約額 | 各社 300万ドル(24か月) |
軌道 | 静止軌道(GEO) |
目的 | 衛星のリアルタイム脅威検知能力(own-ship awareness)構築 |
意義 | 宇宙軍の防御から“戦術的優位”への転換 |
🔍 コメント
SpRCOのディレクター、ケリー・ハメット氏は次のように述べています:
「我々は、米国が新たな宇宙戦の時代において主導的地位を維持するため、
宇宙軍の“戦闘即応能力”を構築している。
戦術的状況認識を強化することは、敵の“キルチェーン”を断ち切り、
我々自身の作戦を迅速に遂行するために不可欠だ。」
🪐 まとめ
この計画は、単なる衛星センサー開発ではなく、
宇宙空間を“戦域”として捉える新たな時代への布石です。
小型・低コストのレーダーを多数搭載することで、
米国は「宇宙における自衛と攻防の即応化」を進めようとしています。