
まとめ記事:スウェーデン深森の基地 ― 欧州が宇宙競争に挑む拠点「エスレンジ宇宙センター」
スウェーデン北部キルナの深い森林地帯、トナカイが歩き科学者がスキーを楽しむ大地に、欧州が米・中・露に伍する宇宙拠点の希望「エスレンジ宇宙センター(Esrange Space Center)」があります。長年米国に依存してきた欧州は、トランプ政権の「アメリカ・ファースト」政策と急成長する民間宇宙市場を背景に、独自の宇宙力強化を模索しています。
欧州の宇宙港計画
- 現在、欧州唯一の本格的発射場は南米仏領ギアナ。その他は米NASAケープカナベラルを利用。
- **スウェーデン(エスレンジ)とノルウェー(アンドーヤ宇宙港)**が新たな拠点候補。
- 2025年3月、独Isar Aerospaceがアンドーヤから試験打ち上げ(海上に墜落も成功と評価)。
- ポルトガル・スペイン・イタリア・ドイツ・英国なども宇宙港計画に参入。
エスレンジの地理的優位性
- 北極圏から200km以上北、30基以上のアンテナで極域衛星と通信可能。
- 敷地6平方km+5,200平方kmの着地ゾーンを保有。広大な無人地域のため安全なロケット実験が可能。
- サーミ先住民のトナカイ放牧地と重なる部分もあり、テスト前には通知して共存を図る。
安全保障と独立性の必要性
- 米国は2025年に**「ゴールデンドーム」宇宙配備型迎撃システム(1,750億ドル規模)**を発表。
- 中国も軌道型兵器システムを実験済み。
- 欧州は防衛面で米国依存が強く、米副大統領JDヴァンスは「欧州は自ら防衛能力を高めるべき」と警告。
- スターリンクのウクライナ依存を巡る懸念もあり、欧州指導者は**「独自の宇宙エコシステム」**構築の必要性を痛感。
宇宙産業の商業化
- スペースXやブルーオリジンが示す通り、宇宙は政府機関だけでなく民間が巨額利益を狙う市場へ。
- 今後5年で衛星数は急増見込み。
- エスレンジを運営するスウェーデン宇宙公社も、衛星打ち上げ・ロケット試験事業を拡大。
- 「スマホのデータ利用ひとつ取っても宇宙資産の恩恵。宇宙は社会全体の資産」と幹部は強調。
展望
エスレンジやアンドーヤといった北欧の発射拠点は、広大で安全な環境と極域衛星運用の利点を武器に、欧州の宇宙自立を後押ししています。
欧州が「安全保障」と「商業市場」の双方で自らの地位を築けるか――その試金石となるのが、このスウェーデンの森にある宇宙基地です。