
アリゾナ大学の研究者、125億円規模の量子研究拠点で量子コンピューティングを加速
米エネルギー省(DOE)は、フェルミ国立加速器研究所(Fermilab)が主導する
「超伝導量子材料・システムセンター(SQMS)」への1億2,500万ドル(約125億円)の助成金を更新した。
今後5年間にわたり、量子技術の実用化を加速させる国家規模のプロジェクトとなる。
この中で、アリゾナ大学(University of Arizona)工学部の研究チームが中核的な役割を担う。
量子誤り訂正の第一人者が主導
プロジェクトの中心人物は、
Bane Vasić 教授(電気・コンピュータ工学、Kenneth Von Behren教授職)。
- フェルミ研究所における量子誤り訂正理論の責任者
- アリゾナ大学のError Correction Laboratory(誤り訂正研究所)所長
Vasić教授は以下の研究者と協力し、量子計算における誤りを最小化する理論とアルゴリズムを開発している。
- Narayanan Rengaswamy 助教
- Nithin Raveendran 助手研究教授
- 博士課程学生 Shantom Borah
「今回の助成金は、これらのシステムを開発・完成させるうえで非常に大きな後押しになる」
— Bane Vasić 教授
量子コンピュータはなぜ難しいのか?
量子コンピュータは、電子などの素粒子レベルの性質を利用して情報を処理する。
🔹 量子ビット(Qubit)の特徴
- 重ね合わせ(Superposition)
→ 0と1を同時に保持できる - 量子もつれ(Entanglement)
→ 離れた粒子同士が連動して状態を決定
これにより、量子コンピュータは特定の問題で古典コンピュータを指数関数的に上回る性能を発揮できる。
🔹 最大の課題:誤り(ノイズ)
しかし量子ビットは極めて脆弱で、
- 温度
- 電磁ノイズ
- 周囲環境
などの影響で簡単に情報が壊れてしまう。
そのため、誤り訂正(Error Correction)が量子計算の最大のボトルネックとなっている。
注目技術:QLDPCコードとは?
Vasić教授のチームが注力しているのが、
QLDPC(Quantum Low-Density Parity Check)コード
特徴
- 量子誤り訂正を効率的なステップに分解
- 必要な量子ビット数が少ない
- 従来主流のトポロジカルコードよりもスケーラブル
「QLDPCコードを使ったシステムを実現し、
大規模な量子コンピュータを可能にしたい」
— Bane Vasić 教授
この分野でアリゾナ大学は世界的にも希少な専門性を持っており、実用レベルへの橋渡しが期待されている。
フェルミ研究所 × 学際連携の力
SQMSセンターは、
- 量子物理学
- 材料科学
- 符号理論(Coding Theory)
- 工学・計算科学
といった分野を横断する学際的拠点。
フェルミ研究所という米国屈指の粒子物理研究機関をハブに、
大学・研究機関・国家プロジェクトが連携する。
「SQMSは、量子物理と符号理論を結びつけ、
汎用量子コンピュータというビジョンへの道を切り拓く」
— Bane Vasić 教授
量子コンピューティングがもたらす未来
この研究が進展すれば、以下の分野で革新的な進歩が見込まれる。
- 🤖 機械学習・AI
- 💊 創薬・医療研究
- 🌾 農業最適化
- 🔐 サイバーセキュリティ
- 💾 大規模データ処理・保存
✍️ まとめ(要点)
- 米DOEが125億円規模の量子研究助成を更新
- アリゾナ大学が量子誤り訂正の中核を担当
- QLDPCコードが大規模量子計算の鍵
- 学際連携により汎用量子コンピュータ実現へ前進