以下は、Insider Brief(2025年12月22日)掲載「VC Firm Offers Insight Into How Investors Are Reassessing Quantum Computing」(Matt Swayne 執筆)を、日本語で投資視点に特化して整理したまとめ記事です。/

VCは量子コンピューティングをどう見直しているのか― ハイプから「耐故障性・製造現実性・実需」へ
量子コンピューティング投資は、「夢の大きさ」から「実装と経済性」へと評価軸を急速にシフトさせています。
シリコンバレーの著名VCである DCVC(Data Collective Venture Capital)の分析によれば、投資家はもはや量子ビット数や派手なデモだけでは動かず、耐故障性への道筋、製造スケール、供給網、そして費用対効果を重視する段階に入っています。
1️⃣ 「熱狂」から「検証」へ:量子投資のフェーズ転換
DCVC共同創業者 Matt Ocko らは、量子分野がより規律ある段階に入ったと指摘します。
「ハイプに流されるのではなく、長期で本当に成立する技術かを見極める」
現在のVCは、
- 研究室レベルのブレークスルー
- 実用機へ向けた製造・スケール・エラー低減
このギャップを埋められる企業だけに資金を集中させています。
2️⃣ DARPAが“第三者フィルター”になった理由
投資判断で特に重視され始めているのが、政府による外部検証です。
DARPA Quantum Benchmarking Initiative
米国防高等研究計画局 DARPA が進める Quantum Benchmarking Initiative は、
- 「本当に実用スケールの耐故障量子計算は作れるのか?」
- という懐疑的立場から企業を評価
プログラムマネージャー Joe Altpeter の
「まず疑うところから始める」
という姿勢は、VCにとって極めて価値の高いシグナルになっています。
特に、Stage Bに進んだ11社は
「2033年までに**コストを上回る価値(utility-scale)**を示せるか」
という厳しい基準に晒され、投資家の事実上の選別指標になっています。
3️⃣ 「方式は何でもいい」時代の終焉
かつては量子ビット方式(モダリティ)を問わず資金が流れていましたが、今は違います。
引き続き有力な方式
- 中性原子
- トラップドイオン
- 超伝導
新たに注目:シリコン・スピン量子ビット
DCVCが初めて本格支援に踏み切ったのが、シリコン・スピン量子ビットです。
- 電子スピンを量子ドットに閉じ込める方式
- CMOS製造プロセスとの親和性が高い
- 高密度集積が可能
代表例として:
- Quantum Motion(英)
- SemiQon(芬)
- Diraq(豪)
ただしDCVCは、「シリコン=簡単」ではなく、
ノイズ制御・歩留まり・統合は依然として難関だと強調しています。
4️⃣ 「量子ビット数」より「エラー率」
投資家の評価軸は明確に変わりました。
重視される指標
- ゲート忠実度(fidelity)
- コヒーレンス時間
- 物理量子ビット → 論理量子ビットのオーバーヘッド
例:
- IonQ
→ 2量子ビット間 99.99%忠実度 - Atom Computing
→ 大規模原子配列 × Microsoft連携
さらに注目されるのが、誤り訂正そのものを主戦場にする企業。
- Iceberg Quantum
→ LDPC符号で「少ない量子ビットで高信頼」を狙う
👉 “量子ビットを作る会社”だけでなく
“量子ビットを減らす会社”が評価され始めたのは成熟の証です。
5️⃣ 実は「量子計算」より先に市場が来る分野
DCVCは、短期的な出口として以下を重視しています。
量子センシング・航法
- Q-CTRL
→ GPSが使えない環境向け量子航法(航空・艦船・潜水艦) - Mesa Quantum
→ チップサイズ原子時計・センサー
これらは
- 小型
- 堅牢
- 即時価値
という条件を満たし、早期商用化が現実的と見られています。
6️⃣ 勝敗を分けるのは「物理+製造+供給網」
記事の結論は明快です。
- 物理法則だけでは勝てない
- 材料調達
- 専用製造ライン
- ファブの再設計
- スケールアップ能力
これらをVCがどこまで支援できるかが差別化要因になります。
DCVCは、自社ネットワークを使った製造アクセスの確保を明確な付加価値として掲げています。
投資家視点での要約(超要点)
- ✅ ハイプ終了、現実主義フェーズへ
- ✅ DARPA=第三者検証フィルター
- ✅ 量子ビット数 < エラー率・耐故障性
- ✅ シリコン系が再評価
- ✅ 近道はセンシング・航法
- ✅ 勝者は「物理×製造×供給網」
位置づけとして
この動きは、
「量子は夢物語か?」→「どの量子が勝つか?」
という問いに市場が移行したことを意味します。