🦋 ジェイムズ・ウェッブ望遠鏡が描く「宇宙の蝶」──NGC 6302の複雑な心臓部を解明

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By arigato_team


🦋 ジェイムズ・ウェッブ望遠鏡が描く「宇宙の蝶」──NGC 6302の複雑な心臓部を解明

1. 宇宙の蝶「バタフライ星雲」とは

  • **NGC 6302(バタフライ星雲)**は、さそり座にある惑星状星雲で、地球から約3400光年の距離に存在。
  • 太陽に似た恒星が寿命を迎え、外層を放出して形成された星雲であり、寿命はおよそ2万年と非常に短い
  • 名前に「惑星」とあるが、惑星とは無関係。数百年前、丸い形が惑星に似ていると誤認されたことに由来。

2. ウェッブが捉えた新しい姿

  • 今回の観測はジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)MIRI装置によるもので、ハッブル望遠鏡やALMAのデータも組み合わせて解析。
  • 星雲中心部の高密度なダストのトーラス(ドーナツ状構造)や、そこから噴き出すジェット構造をこれまでにない詳細さで捉えた。
  • 中心星は22万Kという銀河内で最も高温クラスの恒星の一つで、光を放つ塵雲に包まれており、光学望遠鏡では観測不可能だった。

3. 発見された特徴

  • トーラス(ダスト帯):石英などの結晶性ケイ酸塩や不規則な塵で構成。粒子は1マイクロメートル規模で長期間成長してきた証拠。
  • 層状構造:中心近くに高エネルギーで生成されるイオン、外縁には低エネルギーのイオンが存在。
  • 鉄・ニッケルの痕跡:恒星から双方向に噴出するジェットを明確にトレース。
  • PAHs(多環芳香族炭化水素)の発見:酸素が豊富な惑星状星雲で初めて確認された可能性。中央星の風がガスにぶつかり泡を形成する過程で生じたと考えられる。

4. 科学的意義

  • 中心星の正確な位置が特定され、惑星状星雲形成の仕組み解明に前進
  • PAHsの検出は、炭素系分子の生成メカニズムに関する新しい手がかりを提供。これは地球上の有機化学や生命の起源研究にもつながる。
  • バタフライ星雲は今後、惑星状星雲研究の重要な基準対象となる見込み。

5. 国際協力と研究の背景

  • この成果は**王立天文学会月報(MNRAS)**に2025年8月27日付で掲載。
  • ウェッブ望遠鏡はNASA・ESA・CSAの国際協力で運用され、欧州は打ち上げロケットAriane 5や分光装置NIRSpec、MIRIの半分を提供。

✅ まとめると、ウェッブはバタフライ星雲の「心臓部」を初めて鮮明に描き出し、中心星の実態や炭素分子の形成プロセスを解明する手がかりを提示しました。これは宇宙の進化と生命の材料の理解に直結する、画期的な成果です。


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