2025年8月、NASAのCO2観測衛星ミッション「OCO-2」「OCO-3」が、トランプ政権による予算削減方針を受けて強制終了の危機にあることが報じられました。
これらの衛星は、気候変動の科学的理解や農業、生態系モニタリングに欠かせないデータを提供しており、科学者や農業関係者、エネルギー業界まで広く利用されています。
以下は、記事「Why a NASA satellite that scientists and farmers rely on may be destroyed on purpose(科学者や農家が頼るNASA衛星が“意図的に”廃止される理由)」のまとめ記事です。
🌍 CO2観測衛星の「意図的破壊」計画に波紋:NASAのOCOミッションが危機に直面
■ 危機にある2つの観測衛星とは?
- OCO-2:地球の大気中の二酸化炭素濃度を測定する独立型人工衛星(2014年打ち上げ)
- OCO-3:ISS(国際宇宙ステーション)に搭載された同型機器(2019年設置)
👉 両機は、地球全体のCO2分布だけでなく、植物の光合成活動をも検知可能という“副産物”も生み出し、作物の生育予測や干ばつ分析にも活用されています。
■ なぜ“破棄”なのか?背景と懸念
- トランプ政権の2026年度予算案で、一部科学観測ミッションに対する資金打ち切りが提案
- NASA内部で「Phase F(終了計画)」の策定が指示され、OCO-2の大気圏突入・焼失というシナリオも浮上
- 科学者らは匿名でNPRに証言:「すでにデータの質は極めて高く、継続が望ましいと評価されていたにもかかわらず突然の終了方針は不自然」
■ 衛星データの活用事例と重要性
- 🌱 農業分野:作物収穫量予測、干ばつ状況の把握、森林管理に不可欠
- 🛰️ 科学分野:CO2の地球全体での流れと吸収パターンを把握し、気候変動モデルを精緻化
- 🧭 安全保障分野:食糧不足 → 政治的不安定 → 移民の増加を事前予測する材料にも
■ 費用対効果が“破棄”に見合わない理由
- 🚀 打ち上げ・開発コスト:約7.5億ドル(約1,150億円)
- 🔧 年間維持費:約1,500万ドル(約23億円)
→ すでに大規模投資が終わっており、「まだ稼働可能な観測機器をわずかなコストで延命できる」状態。
■ 民間委託の動きと論点
- NASAはISS搭載機器の維持を民間・大学へ委託する検討を開始
- 一部では「地球観測データの民間依存化が加速」との懸念も
「民間の取り組みは進んでいるが、それを可能にしているのは公共投資で築かれた基盤だ」
─ 気候科学者 アンナ・ミハラク氏(スタンフォード大学)
■ 政治的対立と法的問題
- 民主党議員はNASAに警告:「議会が認可した予算をホワイトハウスが勝手に凍結するのは違法」
- 「予算編成の権限は議会にあり、大統領府(OMB)にはない」との批判
📌 まとめ:この“破壊計画”が意味するもの
NASAのOCOミッション終了の動きは、単なる技術的判断ではなく、科学政策と政治の衝突を浮き彫りにしています。
CO2・植物成長データは、気候変動や食糧安全保障、移民政策にまで影響する「未来予測の鍵」。
それをたった数年の予算カットで手放すことが、本当に国家の利益になるのか──今、問われています。