日本のXR産業に未来はあるのか?──「XR・メタバース総合展」で見えた光と影
2025年7月、東京ビッグサイトで開催された「XR・メタバース総合展」は、AR・VR・MRといった次世代技術が一堂に会する国内最大級の展示イベントとして注目を集めました。しかし、期待とは裏腹に、会場には“技術の進化”と“方向性の迷走”が交錯する独特の空気が漂っていました。
世界で台頭する中国・米国企業と比較しながら、日本企業が見せた意欲と限界、そして一部の企業が示した希望の兆し──。この記事では、展示会の現場から見えてきたXR業界の現在地と未来への課題を掘り下げていきます。
以下は記事「XR And Metaverse Fair Tokyo Showcases Interesting Ideas Amidst A Nervy Industry Outlook」のまとめ記事です。

日本最大級のXR・メタバース展示会に見た可能性と不安──期待と停滞が交差した東京ビッグサイトのリアル
2025年7月、東京ビッグサイトにて開催された**「XR・メタバース総合展」**は、日本における拡張現実(XR)・仮想現実(VR)・メタバース産業の最前線を紹介する大規模イベントとして注目を集めました。
しかし、会場に漂っていたのは、技術革新への希望とともに、**業界全体の“自信のなさ”や“方向性の曖昧さ”**という空気でした。
✅ 大手企業の姿が薄れる中、活躍したスタートアップたち
かつてはソニーやユニバーサル・スタジオ・ジャパン、DMM、LINEなどの大手が存在感を放っていましたが、2025年の展示会は中小企業や新興企業中心。
例えば:
- Techfirm社の「OneXR」:複数のヘッドセットをリンクして遠隔トレーニングを可能にする消防シミュレーター
- 韓国企業のAR絵本:国内では実績があるものの、展示内容はやや時代遅れ感も
このように展示内容にはクオリティのばらつきがありましたが、技術としての可能性を感じさせるブースも確かに存在しました。
✅ 注目の技術:Nikonの“VRスポーツ中継”は未来を示す
最も大きな注目を集めたのは、NikonのVR映像技術でした。
同社のデュアルレンズを活用した3D撮影により、野球場全体を3Dマップ化。観戦者は、
- 打者のすぐ横
- 外野からの視点
など、従来では不可能な位置から試合を体験可能に。
このような没入型・再現性の高いスポーツ体験は、将来的なリアルタイム中継にもつながる可能性があり、数少ない「本当に前進を感じさせる展示」となりました。
✅ 産業の“ギャップ”と“戸惑い”が見えた展示構成
同時開催された「ライフスタイルウィーク」内のファッション、オタ活、デザイン関連の展示会が活気と方向性を示していたのに対し、XR展示の多くは、
- ユーザー向けの明確な価値提案が欠如
- 「仮想オフィス」など、すでに評価が分かれているモデルの繰り返し
- NFTやメタバース看板の展示など、過去のブームにしがみついた内容
といった**“迷い”がにじむ出展**が多く見受けられました。
✅ 期待を裏切らなかった企業も:XrealやClusterの可能性
- Xrealのディスプレイグラスは、ゲーム・日常双方に対応した堅実なUIと軽量性を提示
- Clusterは、日本国内で広く支持されているメタバースプラットフォームとして、VTuberやテレビ局とのコラボ実績あり
→ ただし今回の展示は10周年記念のティーザーのみで、ユーザー層への訴求は弱め
🧭 総括:XR・メタバース業界が「一般ユーザーへの語りかけ」を失っている
本来、XRやメタバースは**「現実では不可能な体験を提供する」技術であるべき**です。
NikonやXrealのような企業は、その本質に迫るデモを提示しましたが、業界全体としては一般層への浸透戦略が弱く、方向性を見失っている印象が否めません。
成長が見込まれる約4,000億円市場にもかかわらず、「なぜ人々に使ってほしいのか」「何をもたらすのか」というビジョンを伝える場がほとんどなかったことは、今後の課題といえるでしょう。
✍️ 編集後記
展示会の意義は「技術の先」を見せること。
“未来”を語るXR業界が、最も未来を見せられなかった paradoxが今回の展示会の象徴でした。
この技術に夢を感じているからこそ、次は「誰のための技術か?」を明確に語る展示会に期待したいところです。