英マンチェスター大学とブラジル・ヴァロンゴ天文台の研究チームが、欧州南天天文台(ESO)の超大型望遠鏡(VLT)を用いた観測により、「よみがえった星」として知られるサクライ天体(V4334 Sgr)が進化の新たな段階に入り、ウルフ・ライエ星に特徴的な強力な恒星風をまとい始めたことを明らかにした。成果は学術誌「王立天文学会月報(MNRAS)」に掲載された。
サクライ天体は、いったん死を迎えた恒星の名残である白色矮星が、1996年に突如として輝きを取り戻した極めて珍しい天体だ。研究チームはVLTで集めた光のデータを、ウルフ・ライエ星特有の高温大気と強力な恒星風を再現する精密なコンピューターモデルと比較。その結果、炭素やヘリウムに特有のスペクトル痕跡が確認され、この星の温度や化学組成、恒星風の性質を割り出すことに成功した。解析によれば、現在の表面温度はおよそ2万7000度から3万6000度に達しており、30年前の劇的な”再燃”以来、着実に温度を上げ続けていることが裏付けられたという。
星から吹き出す恒星風はすでに太陽系ひとつ分に匹敵する広がりの領域にまで達しているとみられる。こうした「ボーン・アゲイン(born-again)」天体は、恒星が最終段階でたどる進化を人間の一生のうちに直接観測できる極めて希少な事例で、サクライ天体はもう一つの類例であるV605 Aquilaeと並び、この現象がリアルタイムで捉えられている数少ない天体の一つとされる。通常なら数千年から数百万年かかる恒星進化の理論を、実際の観測データで検証できる貴重な機会になっているという。
研究チームは今後もサクライ天体の追跡観測を継続し、恒星風や温度の変化が理論モデルの予測とどこまで一致するかを検証していく方針だという。
出典: phys.org「’Born-again’ star offers rare chance to watch stellar evolution in real time」(2026年9月)