オリオン座の一等星ベテルギウスをめぐり、その内部大気が徐々に不均一で非対称な構造へと変化している様子が、アルマ望遠鏡(ALMA)の観測によって明らかになった。英マンチェスター大学のビル・デント氏らの研究チームによるもので、2020年の大減光以降、この赤色超巨星の内部大気を詳細に捉えたのは今回が初めてだという。
2020年、ベテルギウスは通常の明るさの半分ほどまで急激に暗くなる「グレート・ディミング(大減光)」と呼ばれる現象を起こし、世界中の天文学者の注目を集めた。当時の観測では、星の表面にできた局所的な低温領域や、そこから噴き出した塵の雲が減光の原因である可能性が指摘されていた。
今回、研究チームはALMAの長基線構成を用いて、電波からサブミリ波にかけての連続波と、一酸化ケイ素(SiO)や一酸化炭素(CO)由来のスペクトル線を高い空間分解能で観測した。その結果、星を取り巻くミリ波・サブミリ波帯の「光球」に相当する層に、北東側と南西側で持続的に温度の高い領域が存在することが分かった。この非対称な構造は一時的なものではなく、比較的長期間にわたって同じような分布を保っているとみられている。研究チームは、ベテルギウスの内部、あるいはごく近傍に隠れている小さな伴星の重力や物質のやり取りが、この偏った構造を作り出している可能性を指摘している。
もしこの「隠れた伴星」の存在が確認されれば、ベテルギウスがなぜ不規則に明るさを変化させ、時に大きく減光するのかを理解する重要な手がかりになる。研究チームは今後もALMAや他の望遠鏡を用いた追跡観測を続け、この伴星候補の正体や、星の内部構造との関係を詳しく調べていく方針だ。ベテルギウスは超新星爆発を起こす候補星としても知られており、その内部で起きている変化の解明は、大質量星の終末期を理解する上でも注目されている。