欧州宇宙機関(ESA)と中国科学院が共同開発した探査機「SMILE(Solar wind Magnetosphere Ionosphere Link Explorer)」が、北極を取り巻くオーロラの輪(オーロラオーバル)全体を紫外線でとらえた画像が、NASAの「今日の天文写真(APOD)」として2026年10月6日に公開された。衛星による全体像の撮影は2008年以来となる、めずらしい成果だという。
SMILEは紫外線撮像装置(UVI)を搭載し、窒素分子が発する波長160~180ナノメートル帯の光(LBHバンド)を観測することで、昼間側からの太陽光の影響を抑えつつ、夜側・昼側を含めたオーロラオーバル全体を一枚の画像として描き出すことに成功した。空間分解能はおよそ100km。今回の観測は、SMILEが軌道上での機能確認(コミッショニング)を行っていた2026年7月24日に取得されたものだという。
地上からの観測では、観測者がいる場所の夜側しかオーロラを見ることができず、北極を囲む輪の全体像を一度に把握することはできない。SMILEは北極上空最大約12万1000kmまで達する大きく傾いた楕円軌道を描いており、この軌道のおかげで最大45時間にわたってオーロラオーバル全体を途切れることなく見渡せるという、地上観測にはない大きな利点を持っている。
この観測は、太陽から噴き出す太陽風が地球の磁場(磁気圏)とどのように相互作用し、オーロラという現象を引き起こすのかを解明するというSMILE本来のミッション目的の一端を示すものだ。アリガトニュースでは以前、太陽から放たれる超高速電子の起源を探ったソーラー・オービターの研究を紹介したが、その記事の中でも「2026年にSMILEが地球磁気圏と太陽風の相互作用を観測予定」という今後の展望が触れられていた。今回の画像は、その計画が実際に動き出したことを示す最初の成果といえる。
磁場とオーロラの関係は地球だけの現象ではない。水星でもBepiColomboが弱い磁場に伴う「X線オーロラ」を観測していることを以前お伝えしており、太陽風と磁場の相互作用がもたらすオーロラ現象は惑星ごとに異なる姿を見せることがわかってきている。SMILEはまだコミッショニング段階にあり、今後本格的な観測が始まれば、宇宙天気予報の精度向上にもつながる継続的なデータが得られると期待されている。
出典: NASA Science「APOD: 2026 October 6 – A Complete Auroral Oval from SMILE」(2026年10月6日)