ファイザーは「1291件の副作用」を75年間隠そうとした?FDA文書公開訴訟と“9ページの機密文書”の中身を検証

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ファイザーは「1291件の副作用」を75年間隠そうとした?FDA文書公開訴訟と“9ページの機密文書”の中身を検証

新型コロナウイルスのファイザー/BioNTech製ワクチンをめぐって、SNSでは現在も、

「ファイザーは1,291件もの副作用を知っていた」

「それを75年間隠そうとしていた」

「裁判官がFDAに機密文書の公開を命じたことで真実が明らかになった」

といった投稿が繰り返し拡散されています。

実際、米国でFDAに対してファイザー製COVID-19ワクチンの審査資料を公開するよう求める裁判が起き、裁判官がFDAに大量の文書を短期間で公開するよう命じたことは事実です。

さらに、公開されたファイザーの文書には、9ページにわたる非常に長い「Adverse Events of Special Interest(AESI:特に注目すべき有害事象)」の一覧が含まれていました。

ただし、

「1,291件すべてがワクチンによって実際に発生した副作用である」

という解釈は正しくありません。

また、

「ファイザーが75年間隠すよう要求した」

という説明も、実際の裁判記録とは異なります。

では何が起きていたのでしょうか。

そもそも誰が文書公開を求めたのか

2021年、医師や科学者らで構成される

Public Health and Medical Professionals for Transparency(PHMPT)

というグループが、情報公開法FOIAに基づきFDAへファイザー製COVID-19ワクチンの承認審査資料を請求しました。

対象となったのは、FDAがファイザー/BioNTech製ワクチン「Comirnaty」の承認に使用した膨大な資料です。

その後、公開スケジュールを巡ってPHMPTとFDAが対立し、裁判になりました。

「75年間かかる」という話はどこから出てきたのか

ここが最も誤解されているポイントです。

FDAは当初、膨大な資料をFOIAの規則に従って、

  • 個人情報
  • 企業秘密
  • 非公開対象情報

などを1ページずつ確認しながら処理する必要があるとして、

月500ページ程度

のペースで公開する案を提示しました。

当時対象となっていた資料は数十万ページ規模だったため、このペースを単純計算すると数十年かかることになります。

そこから、

「FDAが55年、75年隠そうとしている」

という表現が広まりました。

しかし重要なのは、

FDAが「75年間秘密にする」と裁判所へ要求したわけではない

ということです。

FDA側の主張は、

「通常のFOIA処理能力では月500ページ程度になる」

という公開作業のスケジュールに関するものでした。

まして、これを要求したのはファイザーではなくFDAです。

したがって、

「ファイザーが自社の副作用を75年間隠そうとした」

という表現は正確ではありません。

裁判官はFDAの提案を退けた

一方、裁判所はFDA側の公開ペースを認めませんでした。

2022年1月6日、テキサス州北部地区連邦地方裁判所のMark Pittman判事は、この情報公開には非常に大きな公益性があるとして、

まず12,000ページ以上を公開し、その後、

30日ごとに55,000ページ

のペースで資料を公開するようFDAに命じました。

その後スケジュールは一部変更され、

  • 月80,000ページ
  • 月70,000ページ
  • その後月55,000ページ

という非常に速いペースで文書公開が進められました。

FDAは2023年12月までに、最初の訴訟対象となった約120万ページの処理を完了したと裁判所に報告しています。

したがって、

裁判によってFDAが当初想定していたより大幅に早く資料公開させられた

という点は事実です。

その中から出てきた「5.3.6 Cumulative Analysis」とは

特に注目されたのが、

「5.3.6 Cumulative Analysis of Post-authorization Adverse Event Reports」

という文書です。

これはファイザーが、COVID-19ワクチンの承認後に世界各国から集まった有害事象報告をまとめた安全性監視文書です。

文書は2021年4月30日付で作成され、

2021年2月末までに集められたデータを分析しています。

約4万2000人から有害事象が報告されていた

この資料によると、対象期間には、

42,086人

について有害事象報告が収集されていました。

その中には死亡例を含む重篤な報告も存在していました。

ただし、

「有害事象報告=ワクチンが原因」ではありません。

薬の安全性監視では、

「接種後に起きた医学的出来事」

を因果関係が分からない段階でも収集します。

例えば接種後に、

  • 心筋梗塞
  • がん
  • 脳卒中
  • 転倒
  • 感染症

などが起きた場合、それがワクチンと無関係であったとしても安全性データベースに報告されることがあります。

ファイザーの文書そのものにも、報告された事象には、

  • 自発報告
  • 医療当局からの報告
  • 医学文献
  • 臨床研究

などが含まれ、

因果関係にかかわらず集計される場合があることが説明されています。

では「1291件の副作用」とは何だったのか

ここがSNSで最も誤解されている部分です。

文書の最後には、

APPENDIX 1
LIST OF ADVERSE EVENTS OF SPECIAL INTEREST

という付録があります。

そこには約1,291項目に及ぶ医学用語が、アルファベット順で9ページにわたり並んでいました。

一覧には、

  • 急性心筋梗塞
  • 急性腎障害
  • 血栓症
  • 心筋炎
  • 神経疾患
  • 自己免疫疾患
  • 血液疾患

など非常に多くの病名・医学的状態が含まれています。

これだけを見ると、

「ファイザーが1,291種類もの副作用を確認していた」

ように見えます。

しかし、この一覧の正式名称は、

「Adverse Events of Special Interest(特に注目して監視する有害事象)」

です。

つまり、

安全性監視の対象としてあらかじめチェックしていた医学的事象のリスト

であり、

1,291種類すべてが接種後に実際に発生したという意味ではありません。

なぜこんなに長いリストを作るのか

ワクチンなどの新しい医薬品では、承認後に非常に幅広い健康問題を監視します。

その目的は、

「特定の病気が通常より多く発生していないか」

を早期に発見することです。

例えば、

100万人に1人程度しか起こらない病気の場合、数万人規模の臨床試験では見つからない可能性があります。

そのため、実際に何億回もの接種が行われた後で、

  • 発生頻度
  • 年齢
  • 性別
  • 接種から発症までの期間
  • 通常の背景発生率

などを調べます。

AESIリストは、こうした安全性シグナル探索のための監視リストです。

とはいえ、実際に確認された重大な副作用もある

ここで逆方向の誤解にも注意が必要です。

「1,291項目は全部監視リストだから、COVID-19ワクチンに重大な副作用はまったくない」

という意味でもありません。

実際、FDAはその後、

心筋炎・心膜炎

について、ファイザー製mRNAワクチンとの関連を認識しました。

FDAの2021年のComirnaty審査資料でも、心筋炎・心膜炎について、

known serious risks(既知の重大なリスク)

として追加の市販後調査をファイザーに義務付けています。

つまり、

安全性監視によって実際のリスクが発見・評価されることはあります。

重要なのは、

監視対象になっている

ことと、

因果関係が確認された副作用

を区別することです。

「機密文書」と書かれていたのは事実

公開されたファイザー文書には、

CONFIDENTIAL

という表記があります。

そのためSNSでは、

「極秘文書だった」

「世間に知られないよう隠されていた」

と解釈されることがあります。

しかし、医薬品企業が規制当局に提出する未公開の社内資料や承認申請資料に「CONFIDENTIAL」と記載すること自体は珍しくありません。

企業秘密や個人情報などが含まれるためです。

したがって、

CONFIDENTIALと書かれていることだけで「危険性を秘密にする目的だった」と証明することはできません。

一方で、裁判所がFDAに迅速な情報公開を命じたことは、医薬品承認過程の透明性という意味で重要な出来事だったと言えます。

ファイザー自身はこの文書で何と結論づけていたのか

興味深いことに、この文書の結論はSNSで紹介される内容とはかなり違います。

ファイザーは、2021年2月までに得られた承認後データについて検討した結果、

BNT162b2のbenefit-risk balanceは良好である

との評価を維持しています。

また、新しい重要な安全性情報が確認された場合には当局へ報告するとしています。

つまり、

「この文書に1,291件の副作用が記録され、ファイザー自身が危険だと認めた」

という内容ではありません。

なぜこの話が「1291件の副作用」に変わったのか

構造を整理すると理解しやすくなります。

実際に起きたことは、

① FDAにファイザーの承認資料を求めるFOIA請求が行われた

② FDAが月500ページ程度の公開ペースを提案

③ 単純計算すると数十年かかるとして批判された

④ 裁判所が月55,000ページ以上の高速公開を命令

⑤ 公開文書の中に9ページのAESIリストがあった

⑥ その約1,291項目がSNSで「ファイザーが確認した1,291種類の副作用」として拡散

という流れです。

途中までは実際に起きた出来事ですが、

最後の解釈で意味が大きく変わっています。

まとめ

「ファイザーが1,291件もの副作用を75年間隠そうとしていた」という主張には、

事実の部分と、誤解された部分が混在しています。

事実なのは、

FDAがファイザー製COVID-19ワクチンの審査資料について非常に遅い公開ペースを提案し、米連邦裁判所がそれを退けて月55,000ページ以上の公開を命じた

ことです。

また公開された資料に、

約1,291項目からなる9ページの「Adverse Events of Special Interest」一覧

が存在することも事実です。

しかし、

それら1,291項目がすべてファイザー製ワクチンによって発生したことを示す副作用一覧ではありません。

これは安全性監視のためにチェック対象として設定された医学的事象のリストです。

さらに、「75年間隠そうとした」の主体もファイザーではありません。

問題になったのはFDAのFOIA文書処理スケジュールでした。

一方で、公開後の安全性監視によって心筋炎・心膜炎などmRNAワクチンとの関連が認識された重大な副作用が存在することも事実です。

したがって、この問題を正確に表現するなら、

「裁判によってFDAのファイザー審査資料が予定より大幅に早く公開され、その中に1,291項目の安全性監視対象リストが含まれていた。ただし、それは1,291種類の確認済み副作用を意味するものではない」

となります。

このケースで本当に重要なのは、「1,291」という衝撃的な数字そのものよりも、医薬品の承認データや市販後安全性データをどこまで迅速かつ透明に公開すべきなのか、という問題なのではないでしょうか。

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