英マンチェスター大学と南アフリカ・ウェスタンケープ大学の研究チームが、南アフリカの電波干渉計「MeerKAT(ミーアキャット)」を用いて、数十億光年彼方に存在する中性水素ガスが放つ極めて微弱な電波信号を直接検出したと発表した。成果は米天体物理学専門誌「アストロフィジカル・ジャーナル・レターズ」に掲載された。
中性水素原子は、波長21センチメートルにあたる特有の電波(21センチ線)を自然に放射する。宇宙の膨張にともないこの信号は引き伸ばされて波長が伸びるため、その伸び具合から発信源までの距離や時代を割り出すことができる。研究チームは約96時間分のMeerKAT観測データを解析し、赤方偏移z=0.32および0.44、距離にしておよそ36億7000万光年と47億6000万光年彼方の中性水素信号を検出することに成功した。
今回の成果で特に注目されるのは、これほどの距離において、光学観測による銀河サーベイのデータと組み合わせることなく、MeerKATの電波観測データのみでこの微弱な信号を直接検出できた点だ。この手法は「水素強度マッピング」と呼ばれ、個々の銀河を一つずつ数えるのではなく、広大な宇宙空間にまたがる水素ガスの合計の淡い輝きをまとめて測定することで、効率的に宇宙の大規模構造を調べられる強力な手法として位置づけられている。
この技術が確立されれば、銀河がどのように形成されたか、ダークマターが宇宙の大規模構造(コズミック・ウェブ)をどのように形作ってきたか、そして宇宙が数十億年かけてどのように進化してきたかを解明する手がかりが得られると期待されている。個々の天体を検出する従来の銀河サーベイに比べ、広い宇宙空間を効率よく調査できる点が大きな利点だという。
研究チームは今後、観測対象となる天域をさらに広げ、より長時間の観測を重ねることで、中性水素ガスの分布をより詳細にマッピングしていく方針だという。
出典: phys.org「MeerKAT directly detects faint hydrogen signal from the distant universe」(2026年9月)