イタリア国立天体物理学研究所(INAF)のクレシェンツォ・トルトラ氏らが率いる国際研究チームは2026年9月、南米チリのパラナル天文台に設置された欧州南天天文台(ESO)の「VLTサーベイ望遠鏡(VST)」を用いた観測サーベイ「VST SMASH」により、3つの銀河の周辺でこれまで知られていなかった”幽霊銀河”とも呼べる矮小銀河の候補天体を47個発見したと発表した。成果は学術誌「アストロノミー&アストロフィジックス」に掲載された。観測対象となったのは、地球からそれぞれおよそ1700万光年、8000万光年、1億光年離れた渦巻銀河・レンズ状銀河・楕円銀河の周辺領域で、これまでこの3天体の周りで確認されていた矮小銀河はわずか4個にとどまっていた。
研究チームは今回、自動検出アルゴリズムに頼るのではなく、前景の星や他の天体が放つ強い光を丹念にマスクしながら、VSTがとらえた超深宇宙画像を研究者自身の目で1枚ずつ精査するという地道な手法を採用した。満月およそ12個分に相当する広い天域を対象にしたこの詳細な目視調査の結果、球状矮小銀河や楕円型矮小銀河、不規則型矮小銀河など、多様な形状を持つ47個の候補天体があぶり出されたという。これまでの観測装置では検出が難しかった極めて淡い天体群が、丹念な画像解析によって次々と姿を現した形だ。
今回の発見が注目されるのは、天文学における長年の未解決問題「消えた衛星銀河問題(ミッシング・サテライト問題)」に新たな手がかりを与えうる点だ。標準的な冷たいダークマター理論のモデルでは、天の川銀河のような大型銀河の周囲にはもっと多くの矮小衛星銀河が存在するはずだと予測されてきたが、実際の観測ではその数が理論予測を大きく下回る状態が続いてきた。天の川銀河をめぐっては、史上最も淡い衛星天体「Ursa Major III」の正体がダークマター銀河かブラックホール星団かで議論になっているケースも報告されており、淡く見つけにくい伴銀河をどこまで見つけ出せるかが、この謎を解く鍵を握っているといえる。今回のように系外の銀河でも同様に見過ごされてきた矮小銀河が多数見つかったことは、観測の限界がこれまでの「不足」の一因だった可能性を示唆している。
ただし、今回見つかった47個はあくまで候補天体の段階にとどまる。実際にこれらの銀河が観測対象の銀河と同じ距離・同じ集団に属する伴銀河なのかを確定するには、分光観測による追加の検証が欠かせない。研究チームは今後、より多くの候補天体について分光フォローアップ観測を進め、真の矮小衛星銀河の個数を確定させることで、ダークマターと銀河形成の理論をより精密に検証していく方針だという。
出典: phys.org「Nearly 50 ‘ghost galaxies’ emerge around three hosts, challenging dwarf galaxy counts」(2026年9月)