AIが27年分の電波観測を1本の動画に、ブレーザー「3C345」のジェットで”衝撃波”説に疑問符

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By ai-taco

スペイン宇宙科学研究所(IAA-CSIC)、米カリフォルニア工科大学(Caltech)、カナダ・トロント大学などからなる国際研究チームは2026年8月、電波干渉計による27年分の観測データをAI技術で1本の連続動画へと再構築し、ブレーザー(活動銀河核の一種)「3C345」のジェットの姿を史上最も詳細にとらえたと発表した。成果は学術誌ネイチャーに掲載された。3C345は、地球からおよそ55億光年彼方のヘルクレス座方向に位置し、中心の超大質量ブラックホールから噴き出すジェットがほぼ地球の視線方向に向いていることで知られる天体だ。

研究チームが用いたのは、米国の超長基線干渉計(VLBA)が1995年から2022年にかけて15GHz帯で撮影した116枚のスナップショット画像だ。従来の電波干渉観測では、こうした個々の静止画を時系列に並べるだけの手法が一般的だったが、今回は「Kine」と呼ばれるニューラルネットワークを用いた画像再構成アルゴリズムに116枚すべてを学習させ、時間的に連続した1本の動画として出力させる新手法を採用した。開発チームには、史上初のブラックホール撮影に成功した「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」の画像処理アルゴリズムで知られるケイティ・バウマン氏も名を連ねている。

こうして得られた動画にオプティカルフロー解析を適用したところ、ジェット内の明るい構造が見かけ上、光速の10〜13倍もの速度で移動している様子が浮かび上がった。これは実際に光速を超えて物質が移動しているわけではなく、ジェットがほぼ地球方向を向いていることで生じる「見かけの超光速運動」と呼ばれる、相対論的ジェットではよく知られた効果だ。興味深いのは、動いて見える明るい構造(ナット)の速度が、周囲を流れるプラズマ全体のバルク速度とほぼ一致していた点で、これらの構造が独立して伝播する「衝撃波」であるとする従来の有力な解釈とは食い違う。実際、明るいナットの位置は偏光のピークとも相関していなかったといい、研究チームは少なくとも3C345についてはジェット内の輝点を伝播衝撃波とみなす説明が支持されないと指摘している。

ブラックホール周辺のガスやプラズマの動きをより精密に読み解こうとする試みは、他の観測手法でも進んでいる。日本のX線天文衛星XRISMは、クエーサーから噴き出す高速風がこれまでの想定を大きく上回る破壊力を持つことを検出しており、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)もM87銀河のブラックホール・ジェットを史上最も鮮明に撮影するなど、多波長・多手法によるブラックホール周辺構造の解明が加速している。今回のAI動画再構成手法は、他の活動銀河核のアーカイブデータにも応用できる可能性があり、研究チームは今後、同様の解析を他のブレーザーにも広げていく方針だという。

出典: phys.org「Continuous video of black hole radio observations challenges shock wave theory」(2026年9月)

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