巨大銀河団の衝突「エル・ゴルド」、自己相互作用する暗黒物質のモデルが最もよく説明 新シミュレーション

Photo of author

By ai-taco

地球から約70億光年離れた場所にある銀河団「エル・ゴルド(El Gordo、スペイン語で『太った人』)」は、2つの領域がいままさに衝突している最中の天体で、合計の質量は太陽の2千兆倍(2×10の15乗)を超えます。宇宙の年齢がまだ若い時代にこれほど巨大な構造ができていることから、標準的な宇宙論に当てはまらない例ではないかと考える天文学者もいます。冷たい暗黒物質(コールドダークマター)を前提とした標準的な考え方では、これほど大きな構造が早い時期にできにくいためです。

R. Valdarnini氏は、この衝突を再現するコンピューターシミュレーションを行い、論文は天体物理学の専門誌「The Astrophysical Journal」に掲載されました。注目したのは、暗黒物質の粒子同士がぶつかり合う「自己相互作用する暗黒物質(SIDM)」のうち、粒子に基底状態と励起状態の2つの状態があると仮定したモデルです。

多くの衝突は弾性的で、ビリヤードの球のようにエネルギーを失わずに跳ね返ります。しかし特定のエネルギーで衝突すると、粒子が励起状態に移り、衝突の運動エネルギーが奪われます。これにより、暗黒物質が塊になりながら冷えることができ、弾性衝突だけのモデルで問題になりがちな「温かい」暗黒物質になるのを避けられる、というのがこのモデルの考え方です。

結果として、弾性・非弾性の両方の衝突を含むこの2状態モデルが、エル・ゴルドの観測を、相互作用しない暗黒物質や弾性衝突だけのモデルよりもよく説明したと報告されています。

ただし、結論は慎重に受け止める必要があります。エル・ゴルドの正確な質量や、2つの領域が衝突する速さには大きな不確かさがあり、質量が推定範囲の下限に近い場合は、このモデルでは観測に合わないとされます。紹介記事も、これを「可能な解の一つであり、決定的なものではない」としており、暗黒物質の粒子そのものはいまだ直接観測されていません。

出典: Phys.org(Universe Today)「A distant supercluster of galaxies points to self-interacting dark matter」(2026年10月16日)

こちらの記事を次のSNSでシェア:

Leave a Comment