米国のローレンス・リバモア国立研究所(LLNL)の研究チームが、地球に衝突する恐れのある小惑星に対して、核装置を使って軌道を逸らす、あるいは砕いてしまう方法を調べる3次元シミュレーションを開発しました。研究を主導したのは同研究所のイザイア・サンティスティバン氏で、結果は「The Planetary Science Journal」に掲載されています。
小惑星への対処には大きく2つの考え方があります。1つは「偏向」で、小惑星をほぼ無傷のまま小さな速度変化を与え、地球を外れる軌道に乗せる方法です。もう1つは「破壊」で、小惑星をわざと砕いて拡散させ、地球にとって深刻な脅威となる破片を残さないようにする方法です。NASAのDART(2022年)は、探査機を小惑星ディモルフォスに衝突させて軌道を変える「運動エネルギー衝突体」方式の実証でしたが、記事によれば、核による緩和は、大型の天体や警告時間が短い場合の代替手段として位置づけられています。探査機の衝突体より、はるかに多くのエネルギーを小惑星に与えられるためです。
チームは、LLNLのシミュレーションコード「Spheral」を使いました。小惑星の表面近くで核装置が爆発し、X線が物質を急速に加熱して蒸発させたとき、小惑星がどう応答するかをより正確にモデル化できます。まず、1500以上の1次元シミュレーションを、LLNLの既存コード「Ares」による偏向の結果と比較して、両者がよく一致することを確認。そのうえで、不規則な形をした直径約160mの小惑星について、仮想的な核爆発の距離と、物質の割れやすさの仮定を変えた3つの破壊シナリオを計算しました。
3つのうち2つで、破壊の強い兆候が見られました。最も長く計算したケースでは、物質の約98%が、形を保つ力を大きく失う「完全な損傷」の状態になり、約97%が小惑星の脱出速度(重力を振り切る速度)を超えて動いていました。大部分の物質が互いに逆向きに動いており、小惑星が分裂しつつあることを示しています。また、あるケースでは、表面から離れた位置での爆発のほうが投入される総エネルギーは少ないものの、エネルギーが広い面積に分散したため、損傷はより広範囲に及びました。ただし、遠い爆発が常に有効とは限らず、最適な方法は小惑星の大きさ・形・組成と、目的が偏向か破壊かによって変わるとされています。
計算の負担は大きく、最長のシミュレーションは1680個のプロセッサで59日間走らせても、進められたのは物理時間でわずか145ミリ秒でした。確実に破壊できたと言うには、残る破片が約10m以下で、しかも再び集まらずに拡散することを確かめる必要がありますが、現在の計算は時間が短く、それを明示的には判定できていません。今後は、計算の高速化と解像度の向上、緩く固まった「ラブルパイル」型の小惑星など、より現実的な構造のモデル化、小規模な実験室実験との比較を進める予定です。
出典: Phys.org(ローレンス・リバモア国立研究所提供)「Simulations explore nuclear mitigation of asteroid threats」(2026年10月17日)