探査機サイキ、小惑星帯へ「フルスロットル」 火星フライバイ後、スラスターをほぼ常時噴射

Photo of author

By ai-taco

NASAの探査機「サイキ(Psyche)」が、火星の重力を利用した加速(重力アシスト)を終え、目的地である小惑星帯の金属質の小惑星「サイキ」に向けて、本格的な巡航に入りました。NASAのジェット推進研究所(JPL)が10月22日に発表したもので、9月28日から、推進装置をほぼ連続で噴射しているといいます。

サイキは2023年10月に打ち上げられました。これまでは、火星での重力アシストに向けた位置取りのため、電気推進を断続的に使ってきました。今後は週に1回、管制チームとの通信のために止める以外は、到着まで噴射を続ける計画です。JPLの航法リードのドン・ハン氏は「到着までの間、約90%の時間でスラスターを動かす」と説明しています。

推進に使うのは、太陽光で動く「ホール効果スラスター」です。電磁場でキセノンのイオンを加速して噴き出し、その反作用で進みます。推力は最大でも250ミリニュートンで、AA電池1個を手に乗せたときの重さほどしかありません。ただし噴射を長く続けることで、最大時速10万マイル(約16万km)を超える速度に達する見込みです。スラスターは4基あり、1基ずつ使います。

機体には、十字形の5枚パネルの太陽電池アレイが2つ付いており、受光面積は約75平方メートルです。打ち上げ時に約1,090kgを積んだキセノンは、3年がたった今で、約3分の1を使った状態だといいます。今後3カ月は全出力で噴射し、その後は太陽から遠ざかって発電量が減るため、出力を半分程度まで徐々に絞っていきます。

もう一つの見どころは、スラスターが生む極めて小さな「ねじれの力(トルク)」です。イオンが渦を巻いて噴き出すため、機体にわずかな回転力が生じ、姿勢の維持に影響しかねません。この力は地上では測れず、宇宙でしか測定できないとのことで、JPLの推進運用リードのスティーブ・スナイダー氏は、ホール効果スラスターについて、出力や運転時間ごとに長期間測るのは今回が初めてだと述べています。姿勢制御用のリアクションホイール(回転する車輪)でこの力を吸収し、数時間ごとに別のスラスターを低出力で動かして、車輪にたまった回転の勢いを解消しているそうです。

小惑星サイキは、最大幅が約280kmで、初期の惑星のもとになった天体(微惑星)の核の一部だと考えられています。もしそうなら、地球のような岩石惑星の内部を探る手がかりになります。探査機は2029年夏に到着し、軌道に入って、高度を下げたり上げたりしながら、約2年間の主要な観測を行う予定です。

出典: NASA/JPL「Pedal to the Metal: NASA’s Psyche Heads Toward Asteroid Belt」(2026年10月22日)

こちらの記事を次のSNSでシェア:

Leave a Comment