欧州宇宙機関(ESA)と宇宙航空研究開発機構(JAXA)が共同で開発を進める小惑星探査機「Ramses(Rapid Apophis Mission for Space Safety)」で、機体中枢部にあたる「コアモジュール」の搭載コンピューターおよび関連サブシステムへの電源投入が初めて実施され、成功したことが2026年9月28日、ESAから発表された。
今回の通電試験は、イタリア・ミラノにあるOHBイタリア社のクリーンルームで組み立てが進むコアモジュール内部で行われた。エンジニアが機体の主要な電子機器一式に実際に電力を供給し、他の搭載機器と連携させた統合機能試験を実施できたのはこれが初めてだという。ESAはこの節目を経て、今後より本格的な統合システム試験の段階へ移行できるとしている。
Ramsesの目的地は、地球近傍小惑星「アポフィス(99942 Apophis)」だ。全長およそ375メートルとクルーズ客船に匹敵する大きさを持つこの小惑星は、2029年4月13日(金曜日)に地球からわずか3万2000キロメートルという至近距離を通過する。これは静止衛星の軌道よりも内側を通る歴史的な接近で、Ramsesはアポフィスにランデブーし、地球の重力によって天体の形状・自転・軌道がどのように変化するかを間近で観測する計画だ。機体は2基の小型副機も展開し、アポフィス表面の詳細観測にもあたるという。
この歴史的な接近観測を実現するには、Ramsesが2028年春までに打ち上げられる必要があり、開発スケジュールは極めてタイトだ。ESAはRamsesを惑星防衛(プラネタリー・ディフェンス)の実証ミッションとも位置づけており、地球近傍天体の性質を正確に把握する技術を蓄積することで、将来的に地球への衝突が懸念される天体への対応能力を高める狙いがある。
ESAとJAXAの共同ミッションとしては、水星を目指す探査機「べピコロンボ」や木星の氷衛星を目指す探査機「JUICE」がすでに知られており、JUICEも同じ9月28日に3回目の地球スイングバイを成功させたばかりだ。欧州と日本の宇宙機関による太陽系探査への協力体制は、今後もさらに広がりを見せそうだ。
出典: ESA「First switch on for ESA-JAXA Ramses asteroid mission」(2026年9月28日)