NASAのX線・紫外線観測衛星「ニール・ゲーレルズ・スイフト観測衛星(Swift)」が、軌道上での商業救出ミッションの失敗を経て、搭載する2つの観測装置での科学観測を再開したことが明らかになった。打ち上げから22年が経過したスイフトは、近年の太陽活動の活発化に伴う大気抵抗の増大によって軌道高度が想定より急速に低下しており、大気圏への再突入が現実味を帯びていた。
NASAは2025年9月、軌道上サービス企業のカタリスト・スペース・テクノロジーズ(Katalyst Space Technologies)と契約を結び、3本のロボットアームを備えたサービス機「LINK」を打ち上げてスイフトを捕獲し、キセノン推進系で軌道高度を引き上げる計画を進めていた。しかしLINKは地球からおよそ350キロメートル上空でスイフトへの接近作業に入った後、姿勢制御用のリアクションホイールが2基故障してスピン状態に陥り、一時通信も途絶するトラブルに見舞われた。NASAとカタリストは8月19日、スイフトの捕獲と軌道上昇の試みを断念すると発表した。
捕獲作業の中止を受け、スイフトの運用チームは8月26日、電力消費を抑えるために停止していた紫外線・可視光望遠鏡とX線望遠鏡の2つの観測装置を再起動し、観測を再開した。もう一つの主要装置であるガンマ線バースト検出用の「バーストアラート望遠鏡(BAT)」は、太陽電池パネルの向きを調整して大気抵抗をさらに抑えるため4月から停止されたままで、チームは今後数週間でのデータ収集再開を目指しているという。専門家は、大気抵抗によって軌道高度の低下が想定以上に早く進んでおり、あと1〜2か月ほどで運用継続に必要な限界高度を下回る可能性があると指摘している。
今回のミッションは、老朽化した衛星の軌道を民間企業のサービス機が引き上げるという、初めての試みとして注目されてきた。捕獲自体は実現しなかったものの、LINKは現在も自身の軌道を引き上げながら、スイフトとのランデブー技術の実証を続ける計画だという。NASAのスイフトチームは、いずれ地球に落下する運命にある観測衛星から、残された時間でできる限り多くの科学的成果を引き出すことを最優先課題としている。
出典: Space.com「NASA’s doomed Swift space telescope restarts science work after rescue mission fails」(2026年9月)