米航空宇宙局(NASA)と欧州宇宙機関(ESA)が共同運用するハッブル宇宙望遠鏡のチームは2026年9月17日、巨大な銀河団「エイベル3322(Abell 3322)」を撮影した新たな画像を公開した。がか座の方向およそ26億光年彼方に位置するこの銀河団は、X線波長で非常に明るく輝く「宇宙の巨獣」とも呼べる天体で、ハッブルの広視野カメラ3(WFC3)と掃天カメラ(ACS)による観測データを組み合わせて画像化された。
画像の中心付近には、銀河「2MASX J05101744-4519179」を含む3つの明るい銀河団銀河が写っており、そのうち2つが中心近くで近接した対をなし、もう1つが画像右上に離れて位置するという、やや不自然な配置を見せている。研究チームによれば、この特異な並びは、エイベル3322が少なくとも2つの小規模な銀河団同士の衝突・合体によって、いままさに形成されている最中である可能性を示唆しているという。
銀河団はダークマターと通常の物質(銀河や高温ガス)の双方が集まった巨大な重力の井戸であり、その内部構造を詳しく調べることは、両者がどのように相互作用しながら進化してきたかを解明する手がかりとなる。これまでにもハッブルは、質量の大半をダークマターが占める特異な銀河を発見するなど、銀河団や銀河の観測を通じてダークマターの分布を探る研究に重要な役割を果たしてきた。加えて、エイベル3322のような大質量銀河団は、その強い重力によって背後にあるより遠方の銀河の光を歪め増幅する「重力レンズ」としても機能し、通常では観測が難しい初期宇宙の天体を間接的に覗き見る手段にもなるという。
研究チームは今後も、ハッブルや後継の観測装置による追加データを組み合わせ、エイベル3322のような衝突途上の銀河団における銀河・ガス・ダークマターそれぞれの分布の違いについて、詳細な解析を進めていく方針とみられる。
出典: NASA Science「Hubble Captures Cosmic Cluster」(2026年9月17日)