米プリンストン高等研究所(IAS)のアシュリー・ムメリー氏と英オックスフォード大学のアレクサンダー・グッドウィン氏らの研究チームは2026年9月中旬、恒星サイズの小さなブラックホールから超大質量ブラックホールまで、あらゆる質量のブラックホールが同じ法則に従ってジェットを噴き出していることを明らかにしたと発表した。成果は学術誌に掲載された。
研究チームが注目したのは、恒星がブラックホールの重力によって引きちぎられる「潮汐破壊イベント(TDE)」だ。星が破壊された直後だけでなく、その後数百日から数千日という時間差を経て、ブラックホールが再び電波ジェットを噴き出す「第二のジェット放出」が起きることが知られていたが、その発生タイミングを決める条件は謎のままだった。研究チームは可視光・紫外線・X線・電波の各波長で観測された20個のTDEを精査し、降着率(ブラックホールへ物質が落ち込む速度)とジェット放出のタイミングの両方を信頼できる精度でモデル化できた10個の高品質なイベントに絞り込んで解析した。その結果、ブラックホールへの物質降着率が、重力と放射圧が釣り合う理論上の上限値「エディントン限界」のおよそ2パーセントまで下がった時点でジェットが噴き出し始めるという共通のパターンが浮かび上がった。
この「2パーセント」という閾値は、実は天の川銀河内にある恒星サイズの小さなブラックホール(X線連星系)でジェットが形成される際の条件として、以前から知られていたものと一致する。今回の成果は、太陽の数倍から数十億倍まで質量が9桁も異なるブラックホール同士が、ジェット形成に関して同じ物理法則を共有していることを初めて具体的に示した点で注目される。ブラックホールのジェットをめぐっては、ブレーザー「3C345」を27年分の電波観測データから再構築した先の研究でも、ジェット内部の輝点の正体をめぐって従来説に疑問が投げかけられており、質量やスケールを問わずジェット形成の物理そのものを問い直す動きが広がっている。
研究チームは、ジェットが噴き出すタイミングを降着率から前もって予測できるようになれば、世界中で争奪戦になっている貴重な観測装置の使用時間を、狙ったタイミングでの追加観測に効率よく振り分けられるようになるとしている。今後はより多くのTDEサンプルを対象に同様の解析を進め、この「2パーセント則」がどこまで普遍的に成り立つのかを検証していく方針だという。
出典: Institute for Advanced Study「IAS Scholar Reveals Universal Rule of Black Hole “Burps”」(2026年9月)