独ベルリン自由大学のフランク・ポストベルグ教授らの国際研究チームは2026年9月、土星の衛星「エンケラドゥス」の地下海に存在しうる生命の痕跡について、これまで考えられていたよりもはるかに見つけやすい可能性があるとする研究成果を発表した。成果は学術誌「Science Advances」に掲載された。
エンケラドゥスは南極付近の「タイガーストライプ」と呼ばれる亀裂から、地下海の水を氷の粒子として宇宙空間へ噴き出していることで知られる天体だ。研究チームは、NASAの土星探査機カッシーニに搭載されていた塵分析装置が記録した、塩分を含む氷の粒子およそ1000個分のデータを詳しく解析した。その結果、個々の氷粒子に含まれる塩類の組成が、予想されていたよりもはるかにばらつきが大きいことが判明した。
この「化学的な多様性」こそが、今回の研究の核心だ。地下海の水滴が凍って粒子になる過程で、含まれていた成分がまんべんなく均一に分布するのではなく、特定の成分が一部の粒子に偏って濃縮される傾向があるという。もし地下海に微生物由来の有機物が存在していた場合、同様のプロセスによって、ごく一部の氷粒子にその成分が高濃度で、しかも比較的純粋な形で閉じ込められる可能性があるということになる。これは、将来の探査機がわずかなサンプルから生命の痕跡を検出できる見込みが、従来の想定より高いことを意味する。
研究チームはさらに別の論文で、ポストベルグ氏とノザイール・カワジャ氏が、一部の微生物がエンケラドゥスの地下海のような環境でも、これまで考えられていたより耐性を持つ可能性があることも示した。生命が存在しうる条件の幅が広がったことで、生命探査の見通しはさらに明るくなったといえる。こうした成果は、欧州宇宙機関(ESA)が検討を進める将来のエンケラドゥス探査ミッション構想にも直接関わるものであり、次世代の探査機がどのような観測装置を搭載すべきかを設計する上で重要な指針になるとみられる。
出典: Phys.org「Great news from Saturn’s moon Enceladus in the search for life in space」(2026年9月)