ドイツのマックスプランク太陽系研究所(MPS)と独ミュンスター大学、ゲッティンゲン大学の研究チームが、水星表面に含まれる二酸化ケイ素(SiO2)の量について、これまでで最も精度の高い推定値を導き出したとする研究成果を発表した。クリスチャン・レングリ氏が筆頭著者を務め、成果は2026年8月27日付で学術誌に掲載された。
研究チームは、赤外線分光観測データを地上実験と照合するため、二酸化ケイ素の含有率を重量比でわずか0.5%から97.6%まで幅広く変化させた実験用ガラスを独自に作製した。これを直径0.5ミリメートルほどの微小なガラスビーズに加工し、赤外線分光法で詳細に分析することで、水星表面の観測データを解釈するための精密な基準を確立したという。
その結果、水星表面の二酸化ケイ素含有率は重量比でおよそ37%にとどまり、これまでの推定より最大25%ほど少ないことが判明した。地球では玄武岩や花こう岩に含まれる二酸化ケイ素の割合が75%に達することもあり、地表のいたるところで砂などの形でありふれた物質だが、水星ではそれよりもはるかに乏しいことになる。
レングリ氏によれば、この低い含有率は、水星の火山岩がこれまで考えられていたよりもずっと深いマントル物質が溶けて形成されたことを示唆しているという。水星では誕生からおよそ10億年ほどで火山活動がほぼ停止し、その後は溶岩に覆われることのない硬い岩石質の地殻が長期間にわたって維持されてきたとみられる。今も活発な地質活動が続く地球とは対照的に、水星は太陽系形成初期のごく早い段階で「地質的に静止した」天体になった可能性を示す結果だ。
研究チームは今後、欧州宇宙機関(ESA)と宇宙航空研究開発機構(JAXA)が共同運用する水星探査機べピコロンボが水星周回軌道へ投入された後に得られるデータも活用し、今回の推定値をさらに検証していく方針だという。
出典: ScienceDaily「Mercury’s surface reveals a surprisingly fiery past」(2026年9月11日)