
近年、がん研究の世界では高額な新薬だけでなく、植物由来成分の可能性にも再び注目が集まっています。
今回話題となったのは、料理やハーブティーで知られる「レモングラス(Cymbopogon citratus)」です。
査読付き医学誌に掲載された研究によると、レモングラスのエタノール抽出物を経口投与したマウスでは、人間由来の非ホジキンリンパ腫の腫瘍成長が約95%抑制されました。さらに、正常細胞にはほとんど影響を与えず、がん細胞のみを選択的に死滅させる可能性が示されたのです。
まとめ:レモングラス抽出物がリンパ腫の腫瘍成長を95%抑制──「身近な植物」に秘められた抗がん作用とは?【2026】
レモングラス抽出物とは?
レモングラスは東南アジアを中心に広く利用されるハーブで、爽やかな柑橘系の香りが特徴です。
今回の研究では、このレモングラスから抽出したエタノール抽出物を用いて実験が行われました。研究者らは、人間の非ホジキンリンパ腫細胞(U-937)を移植した免疫不全マウスに対して、約3週間にわたり抽出物を飲み水として投与しました。
腫瘍成長が約95%抑制
結果は非常に印象的でした。
レモングラス抽出物を投与されたマウスでは、
- 腫瘍体積が大幅に縮小
- 腫瘍重量も著しく減少
- 腫瘍増殖が約95%抑制
- 体重減少なし
- 明確な毒性なし
という結果が報告されています。
一般的ながん研究では「腫瘍成長を50%抑制」でも有望な結果とされることが少なくありません。そのため、95%という数字は非常に強力な抑制効果として注目されています。
がん細胞だけを狙う「選択性」
さらに興味深いのは、その選択性です。
研究では複数のリンパ腫・白血病細胞に対して実験が行われました。
高い感受性を示したのは、
- 非ホジキンリンパ腫
- ホジキンリンパ腫
- 白血病細胞
などの悪性細胞です。
一方で、
- 正常な皮膚線維芽細胞
- 正常な血液細胞
では、同じ濃度でも細胞死はほとんど確認されませんでした。
これは、多くの抗がん剤が正常細胞にもダメージを与えるのに対し、レモングラス抽出物が「がん細胞の弱点」を狙っている可能性を示しています。
どのようにがん細胞を死滅させるのか?
研究チームは作用メカニズムも解析しています。
① 活性酸素(ROS)の増加
レモングラス抽出物は、がん細胞内部で活性酸素種(ROS)を急激に増加させました。
抗酸化物質NACを事前投与すると効果がほぼ消失したことから、このROS増加が重要な役割を果たしていると考えられています。
② アポトーシスの誘導
細胞が自ら死ぬ仕組みである「アポトーシス」が活性化されました。
これは単なる毒性による破壊ではなく、細胞自身がプログラムされた死を選択する現象です。
③ ミトコンドリア機能の崩壊
がん細胞のエネルギー工場であるミトコンドリアの膜電位が低下し、酸素消費量も減少しました。
結果として、がん細胞は生存に必要なエネルギーを維持できなくなります。
白茶(ホワイトティー)との比較
研究では白茶抽出物も同時に評価されました。
白茶にも抗腫瘍効果は確認されたものの、
- 腫瘍抑制率は約70〜80%
- 腫瘍は成長を続けた
- 一部正常細胞への影響も確認
という結果でした。
研究者らは、レモングラス抽出物の方がより強力で選択性も高いと評価しています。
ただし「人間で効く」とはまだ言えない
ここで重要なのは、この研究は
「ヒト由来細胞を移植したマウス実験」
である点です。
多くのがん治療候補は、
- 細胞実験
- 動物実験
- 臨床試験(人間)
という段階を経て評価されます。
動物実験で有望な結果が出ても、人間で同じ効果が得られるとは限りません。
そのため、
- レモングラス茶を飲めばがんが治る
- サプリメントで代替治療できる
という結論にはなりません。
現時点では、さらなる臨床試験が必要な研究段階です。
まとめ
今回の研究は、身近なハーブであるレモングラスから抽出された成分が、
- マウスのリンパ腫腫瘍成長を約95%抑制
- がん細胞に選択的なアポトーシスを誘導
- 正常細胞への影響が少ない
- 明確な毒性が確認されなかった
ことを示しました。
近年はタンポポ根エキスなど、植物由来成分による抗がん研究も増えています。こうした研究が将来的に新たな治療法へ発展する可能性はありますが、現時点ではまだ前臨床段階です。
それでも、「ありふれた植物の中に、まだ十分に研究されていない医療の可能性が眠っているかもしれない」という点は、多くの研究者にとって興味深いテーマと言えるでしょう。