米スミソニアン国立航空宇宙博物館などの研究チームが、月面に広がる「若い断層」を詳しく地図にまとめ、月がこれまでにどれだけ縮んだかを過去最も詳しく見積もった。研究は2026年10月14日付の『The Planetary Science Journal』に掲載された。
使われたのは、NASAの月周回探査機ルナー・リコネサンス・オービター(LRO)のカメラ(LROC)の画像だ。LROは月を周回して17年になり、これまでに数百万枚の画像を送ってきた。チームはこの画像から、「ローベイト・スカープ」と呼ばれる崖状の地形と、「小さな海の尾根(スモール・マーレ・リッジ)」を探した。どちらも、地下の岩盤が押し合って乗り上げる「逆断層」によってできる地形で、月の内部が冷えて全体が収縮することなどで生じる。地図には、ローベイト・スカープが8,900以上、小さな海の尾根が2,000以上載っている。
その結果、見つかった若い断層は1万本を超えた。ここから、過去4億〜8億年のあいだに月の半径が約45m縮んだと推定された。縮む速さが一定だったと仮定すると、100万年あたり6〜11cmにあたる。地球のプレートが年に約1.5cm動くのと比べれば、ごくゆっくりした変化だ。
もう一つ重要なのは、月が地球と違って「1枚の板」でできた天体だという点だ。地球にはプレートが15枚以上あり、地震などの地殻活動の約90%がその境目に集中している。月では断層が広い範囲に散らばっているため、月震(月の地震)は理論上どこで起きてもおかしくない。一方で、地殻がもっとも厚い場所ほど断層が少ない傾向があり、そうした場所は比較的安定している可能性がある。
論文は、広い範囲での断層形成が比較的最近になって起きたとも示唆している。厚くて、ひび割れが多く、すき間の多い地殻が内部を断熱し、冷えて縮むのを最近まで抑えていたという考えだ。筆頭著者のトーマス・ワッターズ氏は、LROCの画像で見えた若い断層の数は想像よりずっと多かったと述べ、既存の断層は今も成長し、新しい断層も今できているはずだと見ている。
月面に基地や観測装置を置く計画が進むなか、「どこが揺れやすく、どこが安定しているか」という地図づくりの基礎になる成果だ。
出典: Phys.org(Smithsonian National Air and Space Museum提供)「Lunar fault maps reveal how much the moon is shrinking」(2026年10月15日)