米航空宇宙局(NASA)は現地時間2026年9月19日、ハッブル宇宙望遠鏡が地球の周回軌道を通算20万周したと発表した。1990年4月にスペースシャトル「ディスカバリー」で打ち上げられてから36年以上が経過し、これまでの飛行距離は50億マイル(約80億キロメートル)を超え、累計170万件以上の観測をこなしてきたという。
節目となった軌道周回の当日、ハッブルが向けていたのは、地球からおよそ46億5000万光年離れたエリダヌス座方向の銀河団「MACS J0417」だった。この巨大な銀河団は強力な重力レンズとして働き、背後にあるさらに遠方の天体からの光を曲げて増幅する。2025年にジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が発見した超新星「アテナ」は、この重力レンズ効果によって同じ爆発の光が複数の経路をたどって届くとみられており、2027年3月ごろまでの間に再び姿を現すと予測されている。
ハッブルは今回のように同じ天域を繰り返し観測することで、アテナの再出現のタイミングを追跡している。複数回にわたって届く光の到達時刻のずれを精密に測定できれば、MACS J0417が持つ質量分布をより正確に割り出せるほか、宇宙の膨張速度を示す「ハッブル定数」の精度向上にもつながるという。重力レンズを”物差し”として使うこの手法は、遠方銀河のダークマター分布を探る近年の研究とも通じる発想だ。
ハッブルはこのところも巨大銀河団「エイベル3322」の形成途上の姿をとらえるなど、JWSTやローマン宇宙望遠鏡といった後継機が相次いで稼働を始めた現在も、独自の観測を続けている。NASAは、稼働開始から36年が経つハッブルについて、今後も長期モニタリング観測を通じて宇宙論の解明に貢献していく方針だとしている。
出典: NASA Science「NASA’s Hubble Seeks Lensed Supernova, Marks 200,000 Orbits」(2026年9月19日)