米航空宇宙局(NASA)ゴダード宇宙飛行センターのマーティン・コーディナー氏や米アメリカン大学のネイサン・ロス氏らの国際研究チームが、太陽系を通過中の恒星間天体「3I/ATLAS」を電波干渉計「アルマ望遠鏡(ALMA)」で観測し、メタノール(CH3OH)が異常なほど豊富に含まれていることを突き止めたと発表した。3I/ATLASは「オウムアムア」「ボリソフ彗星」に続き、これまでに確認された3例目の恒星間天体で、2025年7月に発見された。
研究チームがアルマ望遠鏡の小型干渉計「ACA」を用いて解析したところ、メタノールとシアン化水素(HCN)の存在比が70から120に達することが判明した。これは太陽系内で観測されてきたほぼすべての彗星を上回る値で、平均的な太陽系彗星に比べておよそ70倍ものメタノールを含んでいる計算になるという。これほど極端なアルコール濃集は、彗星の観測史上でも異例とされる。
さらに今回の観測では、メタノールが彗星本体の核だけでなく、コマ(彗星を取り巻くガス・塵の雲)の中に漂う微小な氷の粒子からも放出されている「二重の放出源」を持つことが確認された。恒星間天体でこうした挙動が追跡されたのは今回が初めてだという。成果は米天体物理学専門誌「アストロフィジカル・ジャーナル・レターズ」に掲載された。
3I/ATLASをめぐっては、別の研究チームによる分光観測で、氷点下240度を下回るような極低温環境で形成された可能性が示されるなど、他の手法による起源解明も進められている。今回のメタノール濃集という化学的な特徴は、この天体が太陽系の彗星とは異なる条件、たとえば有機物に富んだ特殊な環境で誕生した可能性を示す新たな手がかりとなる。
研究チームは今後もアルマ望遠鏡などによる追加観測を進め、3I/ATLASがどのような星系でどのような過程を経て形成されたのか、その化学組成のさらなる解明を目指す方針だという。
出典: ALMA Observatory「ALMA Detects Extremely Abundant Alcohol in Interstellar Comet 3I/ATLAS」(2026年9月)