中心の超大質量ブラックホールが活発にガスを飲み込んでいる「活動銀河核(AGN)」は、これまで強力な放射やガス噴出によって周囲の星形成を抑え込む「クエンチング(星形成の停止)」の主要因として理解されてきた。しかし国際研究チームが欧州南天天文台(ESO)の超大型望遠鏡(VLT)に搭載された面分光装置「MUSE」を用いて近傍の9個のタイプ2セイファート銀河を調べたところ、むしろ活動銀河核が星形成を促している可能性を示す共通パターンが見つかったとする研究成果が発表された。論文の筆頭著者はピーシン・ジュー氏で、成果は学術誌「アストロフィジカル・ジャーナル」に掲載された。
研究チームは、理論的に構築した3次元の励起診断図をMUSEの観測データに適用し、銀河中心からの距離ごとにガスがどのようなエネルギー源によって光っているかを詳細に分類した。その結果、9個すべての銀河に共通して、中心からおよそ0.8〜6キロパーセク(1パーセクは約3.26光年)離れた領域にリングまたは弧状に連なる星形成領域が存在することが確認された。
同時に、活動銀河核由来の放射によって電離されたガスが円錐状(バイコーン)に銀河円盤の外側まで広がっている様子や、中心付近では高速の衝撃波に支配された領域が、しばしばこの電離円錐に対して垂直な方向に伸びている様子も観測された。星形成リング、電離円錐、そして垂直方向の衝撃波帯という3つの要素が組み合わさった構造が、調査した銀河すべてに共通して現れた点が今回の発見の核心だ。
この結果は、活動銀河核からのアウトフロー(ガス流出)が必ずしも周囲のガスを一方的に吹き飛ばして星形成を止めるだけの存在ではなく、条件によってはガスを圧縮するなどして、むしろ特定の距離帯で新たな星形成を誘発する働きも担っている可能性を示唆している。ブラックホールとその母銀河がどのように影響を及ぼし合いながら共に進化してきたのかという「共進化」の描像に、より複雑な修正を迫るものといえる。
研究チームは今後、より多くのセイファート銀河を対象に同様の解析を広げ、今回見つかったパターンが銀河一般に普遍的なものなのか、それとも特定の条件下でのみ現れる現象なのかを検証していく方針だという。
出典: phys.org「Active black holes reveal star-forming rings and shock waves in nine nearby galaxies」(2026年9月)