米航空宇宙局(NASA)とハッブル宇宙望遠鏡の観測チームが、土星の南極を取り巻く十角形(デカゴン)状の巨大な大気の波を確認したと発表した。土星の北極には、1980年代にNASAの探査機ボイジャーが発見して以来、45年以上にわたり観測され続けている有名な六角形のジェット気流が存在することで知られるが、南半球でこれほど規則的な多角形の構造が見つかったのは今回が初めてだという。
今回確認された十角形は、直径にしておよそ17万キロメートルに達する巨大な構造で、一辺の長さも1万6000キロメートル前後に及ぶ。ハッブルの過去の観測データをさかのぼって調べたところ、この構造は2023年ごろから徐々に形成され始め、現在も勢力を強めながら成長を続けている可能性が高いことが分かった。単なる雲の模様ではなく大気の複数の層にまたがって広がっていることも判明しており、北極の六角形と似た側面を持ちながらも、いくつかの点で異なる特徴を示しているという。
研究チームによれば、北極の六角形が非常に安定した構造として何十年も観測され続けてきたのに対し、南極の十角形はまだ発達段階にあるとみられ、今後さらに姿を変えていく可能性がある。土星のように厚い大気を持つガス惑星の両極でこうした規則的なジェット気流が形成される仕組みは、大気力学における普遍的な現象なのか、あるいは土星に特有の条件によるものなのか、今のところ明確な結論は出ていない。
研究チームは今後もハッブルなどの観測装置を使って南極の十角形の変化を継続的に追跡し、北極の六角形との比較を通じて、ガス惑星の大気循環メカニズムの理解を深めていく方針だという。
出典: NASA Science「NASA’s Hubble Tracks New Decagon Encircling Saturn’s South Pole」(2026年9月)